巡礼道から夜明け前のビジャフランカ・デ・ビエルソ市街を遠望
喧嘩になるのを防ごうと慌てて両脇の二人が彼の肩を押さえつけて座らせたが、彼はハングルで何か叫びながら顔をテーブルに突っ伏した。興奮して肩が震えている。
“飲んだら語るな日韓関係”
夜明け前に出発。まだ街路灯が点いているビジャフランカ・デ・ビエルソの 「中世の橋」
私は痛ましくて言葉が出なかった。全員が無言のままで気まずい空気が広い食堂に充満する。なんとかこの場を収拾しなければならないが自分の発言を撤回することは沽券に係るし、反日史観は絶対に看過できない。かといって、これ以上言葉を尽くしても事態をこじらせるだけであろう。
「お互いに疲れているから、そろそろベッドに行こうか。今夜はお互いの認識が異なるということがよく理解できた。それじゃあ、おやすみなさい」と言って自分の大部屋に戻った。なんともやりきれない気分だ。内心忸怩たる思いだ。
韓国を自転車旅行して韓国人と歴史問題をまともに話すことの危険性は十分に知っていた。それなのに優秀で真面目な学生たちという安心感からか、ついつい油断して“歴史問題を真正面から論じる”という失態を犯してしまった。しかも酒が入れば議論が感情的になるのは長年のサラリーマン生活でいやというほど学んでいるではないか。
私は改めて肝に銘じた、“飲んだら話すな歴史認識”。
⇒第17回に続く
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