国防総省 vs CIA
CIAは2001年の9・11(米中枢同時テロ)以降、情報収集・分析機関というよりも、無人機を中心に準軍事的な色彩を強め、これに国防総省が危機感を深めてきた。地域的に見ると、パキスタン、アフガニスタンの山岳地帯はCIAが、イエメンはCIAと国防総省の特殊作戦軍の両者が担当するという仕分けになっていた。
CIAの改革を検討してきたオバマ大統領は側近であるブレナンCIA長官と無人機の所管について緊密に協議してきた。その結果、米メディアなどによると、CIAにはこれまで通り、パキスタンとアフガニスタンでの無人機作戦の権限を認める代わりに、イエメンでは、CIAに無人機を飛行させてテロリストの探索はさせるものの、標的を殺害するためのミサイル発射は国防総省の特殊作戦軍の決定に委ねる、という決定を下した。
作戦の透明性は困難なままに
問題はこの裁定によって、大統領が公約した無人機作戦の透明性が確保できるのかどうか、ということだが、CIAがパキスタンとアフガニスタンの作戦権限を保持している限り、透明性の確保は難しいだろう。
なぜなら特殊作戦軍の作戦であれば、作戦実行後にたとえあいまいであっても、事実関係をある程度公表することになる。しかしCIAによる作戦は秘密作戦であり、作戦を遂行したかどうかも含めて詳細を明らかにする必要がなく、パキスタンとイエメンの作戦は民間人の死傷者が出ても闇の中に置かれることになる見通しだ。
これは実は米国にとっても都合の良い面も多い。特殊作戦軍の純軍事作戦ということであれば、作戦に先だってパキスタンやアフガニスタンなどの相手国に事前に通告して了承を得なければならない。そうしないと、主権の侵害ということになるからだ。