2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月7日

 ジャンナティがイランきっての保守強硬派であることは疑いありません。問題は、ジャンナティの専門家会議議長選出が何を意味するかです。社説は、選出がイランの保守強硬路線が変わらないことを意味すると言っていますが、果たしてそうでしょうか。

本当に保守強硬なのか?

 まず、専門家会議の議長は保守派が選出されるのが常であるとの指摘があります。米ジョージタウン大学イラン専門家のAriane Tabatabai教授によれば、専門家会議の議長は、「指名の内部手続き」のため、保守派が選出されるとのことです。内部手続きの詳細は分かりませんが、もしそうであれば、ジャンナティの選出にそれほどの意味があるわけではありません。

 先般の専門家会議の選挙では、定員88議席のうち、穏健派が52議席を占めて勝利し、特に首都テヘランでは、定員18議席のうち、穏健派が15議席を獲得し圧勝しました。このような事情を踏まえ、専門家会議の議長選挙では、穏健派が、選挙での敗北後の強硬派の立場に配慮するという戦術的配慮から、ジャンナティを支持したとの見方もあります。

 事実、穏健派のリーダー格で、テヘラン区でトップ当選し、議長候補ともみなされていたラフサンジャーニが、「選挙は落ち着いた雰囲気の中で行われ、迅速に、かついかなる論争もなく行われた」と述べたと報じられています。これは、ラフサンジャーニがジャンナティの立候補に対抗していなかったことを示唆しています。

 前述のAriane教授によれば、穏健派はイラン政治で総じてよくやっており、穏健派の関心は、専門家会議の議長選出よりは核合意の成果を如何に具体化するかにあるといいます。関心の的となるのはハメネイの後継者です。専門家会議の最重要任務は最高指導者を選ぶことであり、ハメネイが76歳と高齢で、2014年9月に前立腺がんの手術をしていることを考えれば、ジャンナティ議長の間にハメネイの後継者を選出する可能性も排除できません。

 専門家会議がどのような手続きで新しい最高指導者を選出するのか定かでなく、議長が保守強硬派で議員の大半が穏健派という状況の下で、どのような結果になるか分かりませんが、議長が保守強硬派だから、最高指導者に保守強硬派を選ぶと決まっているということでもなさそうです。なお、ジャンナティ自身については89歳であり、彼がハメネイの後継者になることは考えられません。 

 全体としてジャンナティの選出は、必ずしも社説の言うようにイランの保守強硬路線を再確認したものとは言えません。

  
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