2024年11月22日(金)

世界の記述

2016年7月7日

日本にも忍び寄るイスラム過激派の影

 幸い我が国については先般開催されたG7伊勢志摩サミットも厳重警戒が奏功し何事もなく終了した。しかし近年日本にはイスラム教徒が太宗を占めるインドネシアやマレーシアなどからの観光客が急増している。

 勿論、彼らの大半はアジアの先進国で伝統と近代化を融合させた我が国に純粋に関心を持つ善良な一般市民であることは確かである。それでも彼らの中に観光客を装って来日する者がいないとは言い切れまい。過去にはアル・カイダの傘下組織の幹部であるリオネル・デュモン容疑者が、我が国在住のアジア系やアフリカ系のイスラム教徒の助けを借りながら誰にも気づかれることなく約1年2カ月に亘り潜伏していた事例があることを忘れてはならない。

 油断は禁物である。既に紹介したバングラデシュ人質テロ事件のハン・イムティアズ容疑者(20歳)はフェイスブック上で、英国とカナダから入国を禁止されているイスラム教説教師のザキール・ナイク師の「全てのイスラム教徒はテロリストになるべき」との発言を引用し自身が過激派に傾倒している事実を鮮明にしていた。

 実は、そのザキール・ナイク師が15年11月、日本ムスリム平和連盟(JMPF: Japan Muslims Peace Federation)の招待で来日し、国内数カ所で講演のうえ聴衆にイスラム教徒への改宗を呼びかけている。講演を聞きイスラム教への改宗を申し出た聴衆が10人前後いたと言われる。

 さらに現在はインターネットの時代である。わざわざイスラム教の説教師やISの勧誘者が来日しなくても支持者を増やすことは可能である。バングラデシュで起きた人質テロ事件の容疑者の大部分が富裕な家庭の若者であったのは、同国でインターネットを自由に駆使できる層がある程度限られていたためとも考えられる。そうであるとすれば大半の若者がインターネットを不自由なく使える我が国には、バングラデシュと同様な考えを持つ若者が一定程度存在していたとしても不思議ではない。

 今回のバングラデシュの人質事件は、テロなどの海外危険情報の収集・分析を含めた我が国企業の危機管理や海外旅行時の心構えも含めた日本人の危機意識の在り方を改めて問い直していると言えそうだ。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る