2024年7月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月21日

 フロリダの乱射事件は、51名が死亡するという大惨事になりました。犯人が警察にISへの忠誠心を通告し、IS側も犯行声明を出したので、ISの犯行ということになっていますが、警察は、犯人はISの訓練された工作員ではなかったとしています。犯人は死んでいますから、ISからの特定の命令の実施として、この大量殺害が行われたのか否か、捜査ではっきりさせるのは困難でしょうが、現段階では、ISのシンパが勝手に起こした犯行とみるのが適切でしょう。

ソフトターゲット狙いの犯行

 この論説は、ISがシンパにこういう攻撃を奨励しているから、今後増えると警告しています。適切な警告ですが、テロ対策の観点からは問題がより難しくなること、文民攻撃のようなソフトターゲット狙いの犯行が多くなることを覚悟せざるを得ません。

 アルカイダというのは、組織的にオサマ・ビン・ラディンに忠誠を誓った人を中心とし、テロの実行においても、組織だったところがありました。一匹狼のようなものをテロに使うのは、コントロールができず、情報も漏れやすいという考慮から、躊躇し、差し控えていたように思われます。ISは、一匹狼の犯行を奨励し、後付けで自分の犯行とするところがあります。これが本当の意味で、ISの犯行と考えられるのかどうか疑問でもあります。

 「9・11」の事件の犯人はアルカイダが選別し、派遣した人でした。海外テロ実施能力は、かつてのアルカイダの方が高く、いまのISには、一匹狼に頼らざるをえない能力しかないとも考えられます。

 この論説の著者、ハッサンは、アルカイダとISをはっきり対比するために違いを強調していますが、少し行き過ぎがあります。オサマ・ビン・ラディンも、米国人は税金を払って、イスラム諸国を侵略している米政府を支援している以上、攻撃対象になりうるとの見解であり、文民の死者を残念な付随損害と考えていたわけではありません。

 なお、テロ事件が起きますと、イスラム教徒入国問題で、米大統領選挙に影響が出ます。11月の米大統領選挙に近接した時点でテロが起きますと、米国民が恐怖にかられ、冷静な判断ができなくなる恐れがあります。

  
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