6月2日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「ポーランドにはヨーロッパの警告を無視する余裕はない、EUとNATOのメンバーであることは西側の価値を尊重することを必要とする」との社説を掲載し、ポーランドは法の支配など民主主義の価値を尊重すべきであると論じています。社説の論旨は、次の通りです。
ポーランドはEU成功物語
共産主義崩壊後の10年、ポーランドはEUの成功物語であり、ソ連の衛星国で民主主義が花開く証左であった。しかし「法と正義」党が昨秋、選挙に勝った後、興奮は冷めつつある。この党の指導者カチンスキは、独立した司法、メディア、治安機関を統御しようとしている。EUとNATOの同盟国には警戒心が出てきている。
6月1日、欧州委員会はポーランドが法の支配の原則に違反していると宣言した。EUが加盟国にこういう非難をしたのは初めてである。EUは特に、憲法裁判所に党の支持者を任命、法律の違憲判断を出す裁判所の権限を変更したことを問題にしている。EUが自分の意見を通せるかはっきりしないが、カチンスキがEUの要求を無視するのは賢明ではないだろう。
加盟国の憲法変更をEUが非難したことは議論を呼ぶ。ポーランド政府は民主的に選ばれた政府である、EUは内政干渉をしている、と怒っている。
しかし、EUが28の加盟国は最も高い民主主義の基準を維持すべきであるとするのは正しい。EUはその条約にある民主主義、法の支配、人権尊重を含む共通の価値のうえにできている。加盟国が加盟の前にこれらの基準を満たすよう要求してきたことが、EUの最大の成果と言ってもよい。ハンガリーが自由や法の支配で後退するのをEUは止め損ねたが、ポーランドについて同じ過ちはできない。
EUが「法と正義」党の路線を変えさせる能力には限界がある。罰金を科したり、EUの大臣会合で投票権を奪うことは可能であるが、すべてのEUメンバーの全会一致が必要であり、ハンガリーのオルバン首相は罰則適用に反対すると言っている。
しかし、カチンスキはEUとの見解の不一致が長引くことがポーランドの国益を損ねることを認める必要がある。ポーランドは西側機構から大きな利益を得てきた。ポーランドはEUの構造改革基金の2020年までの最大の受益者であり、その労働者はEU内で他国より雇用機会を得ている。ポーランドはまた、NATO軍の配備を要求し、それを得ている。
来月、NATO首脳会議がポーランドで行われるが、ポーランドは西側クラブの一員であることは義務を伴うと認識すべきである。共同防衛の保証を享受しながら、EUや北大西洋同盟を支えている価値を拒絶することはできない。
出 典:Financial Times ‘Poland cannot afford to ignore Europe’s warning‘(June 2, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e3ddf868-28b3-11e6-8b18-91555f2f4fde.html#axzz4AwpS5SiE