香港も台湾も中国の考える路線に乗ろうとはしないが、内外に多くの問題を抱える中国は、新たな中台危機を招くような余裕はないようだと、5月28日ー6月3日号の英エコノミスト誌が述べています。要旨は、以下の通りです。
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叶わぬ“中国の夢”
かつての中華帝国のように、中国がアジアで尊敬と忠誠を享受するようになる、というのが習近平の「中国の夢」だが、周囲は反抗的な北朝鮮から恩知らずなベトナムまで、中国に従わない無礼な国ばかりである。中でも気がかりなのは、中国から奪われた「不可分の一部」、香港と台湾が中国の懐に戻ることに全く熱意を示さないことだろう。それどころか、香港を訪れた中国共産党の高官、張徳江は抗議デモを避けようと厳戒態勢の中を走り回る羽目になり、蔡英文も総統就任演説で「一つの中国」への支持表明を拒むなど、最近の出来事は中国が香港でも台湾でも苦戦していることを示している。
香港でも台湾でも中国の戦術はほぼ同じで、高圧的な力の誇示と経済的アメとムチを使い、意に染まらない考え方は無視もしくは弾圧、そして汎中国の愛国主義に訴えようとする。しかし、こうしたやり方は効果がないことに今や中国も気付くべきで、香港では大勢の中国人観光客が住民の新たな不満の種になり、台湾でも、馬政権が進めた中国との貿易、観光の大幅な拡大は、2014年の大規模な反中デモにつながった。
ところが、張は経済重視を説くのみで、行政長官選出についてまともな選挙が認められないなど、香港人を怒らせている問題には対処しようとしなかった。