ウォールストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムズ紙はともに5月27日付で、オバマ大統領の広島における演説について社説を書いています。両社説の要旨は次の通り。
WSJ社説「奇跡のような提案」と一蹴
オバマは広島の演説で核について奇跡のようなことを提案した。いわく「私自身の国と同様、核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」。しかし、核兵器の存在だけではなく、それを作る技術知識も大問題である。北朝鮮は自らのため、そして輸出のために技術の創出を止めようとしない。これが核拡散である。広島と長崎以来――それは大戦を終わらせて数百万の命を救ったのだが――政治家が根気強く取り組んできた厄介な問題である。
オバマはその任期の最後に戦争を呪ってみせた。それはオバマの世界観の極致とも言うべきものである。それはオバマの外交政策の遺産に対する大方の批判の根拠を簡潔に示すものである。それは際限のない思い込みやすさであり、妥当な証拠に裏打ちされない信念である。
オバマの感情は疑いもなく崇高である。しかし、それは世界の秩序の崩壊の状況とは相容れない。オバマの後継者が引き継ぐこの不確かな遺産を一言で表現するのは同盟である。戦争、特に核兵器の拡散の制限は、他国の参加する意思に大きく依存する。しかし、オバマの政策は、同盟国を支持し守るという米国の伝統的な決意について、重要な同盟国に疑いを持たせることとなった。
核の拡散に対処するには「道徳の革命」では不十分である。オバマの演説は感銘的であったが、次期大統領の政策はそれ以上のものであることを要しよう。
出典:‘Obama’s Hiroshima Genie’(Wall Street Journal, May 27, 2016)
http://www.wsj.com/articles/obamas-hiroshima-genie-1464389344