2024年11月3日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月14日

 米戦略予算評価センター(CSBA)のモンゴメリー上席研究員が、6月7日付ウォールストリート・ジャーナル紙にて、東アジアにおける米国の核抑止力が低下していることを指摘し、NATOでの核政策に範を取り、米国の戦術核兵器を日本、韓国と共同運用することで両国を安心させ、両国の核武装を防止させるよう提案しています。要旨、次の通り。

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中国が米国を西太平洋地域から
遠ざける力を持ち始めている

 オバマ大統領は広島で、核拡散の危険と核兵器のない世界の夢について述べたが、核兵器拡散を止めたいと思ったら、米国は東アジアにおける核抑止を強化する必要があろう。

 東アジアでは北朝鮮の核兵器開発と、中国が米国を西太平洋地域から遠ざける力を持ち始めていることが、韓国、日本の安全を脅かしている。韓国は、米国は北朝鮮ミサイルによる攻撃を恐れて危機の際にも助けてくれないだろうと考えるようになるかもしれないし、日本は地域における米国の力が低下してくるに従い、小さくとも何らかの核兵器の備えを持つことで軍事バランスを改善しようとするかもしれない。

 そうなると、東アジアではロシアも含めて5カ国の核保有国が並立することになる。しかも、それら諸国は互いに歴史上の恨みや政治紛争を抱えていて、いつ火を噴くかわからない。

 この構図はNATOに類似している。NATOにならって、東アジアでも米国は、核兵器の運用についての役割、リスクと責任を(日韓と)分かち合ってはどうか。

 冷戦期、欧州は米国が自分の核兵器を使って欧州を守る覚悟があるかどうか疑念を持っていたため、そのような疑念を晴らすために、Nuclear Planning Group(核保有、核配備のNATO加盟国が、核兵器の配備、運用方針につき定期的に見直し)を設けたし、米国の戦術核兵器配備を許した加盟国には、この核兵器を米国と共同で運用する権利を与えた(注:そのような戦術核兵器はNATOの欧州地域に約200発配備されている。ドイツでは、そのうちドイツ国内配備の約20発の運用について「ドイツはdual keyを持っている」と称している)。

 このような取り決めは東アジアでは無いし、日韓が争っていることに鑑みると、これは米国と各々が二国間の取り決めで決めた方がいいのかもしれない。
また、核兵器の「共同運用」については、これを自分の領土に配備することに世論の抵抗が強い国のためには、グアム島にこれを保管し、有事には韓国軍あるいは日本の自衛隊がここに展開すればいいだろう。また米国はこのような戦術核兵器を保持、近代化していかねばならない(注:欧州配備の戦術核は単なる爆弾から、GPS付きの精密誘導爆弾に取り換えられつつある模様)。
米国が東アジアにおける核抑止力を高めないと、地域の諸国は核開発を進め、核拡散を招くだろう。

出典:Evan Braden Montgomery ,‘America’s Nuclear-Deterrence Challenge in Asia’(Wall Street Journal, June 7, 2016)
http://www.wsj.com/articles/americas-nuclear-deterrence-challenge-in-asia-1465318715


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