この論説の筆者はヴァージニア大学で博士号を取得した若手ですが、彼の属するCSBAは、国防総省のシンクタンク的存在で、国防総省との関係は強く、本件提言は、これからの国防総省の政策に反映される可能性が大きいものと思われます。また、それがWSJ紙によって広く広報されることにも意味があります。
核抑止議論を一歩先に進める
論説は、北朝鮮の核保有、中国による米軍接近阻止能力の向上をほぼ前提として、東アジアにおける核抑止議論を一歩先に進めるものです。日本、韓国の核武装を認めるものではなく、米独間に見られるような米国の戦術核兵器の共同運用(dual key)方式を提唱したもので、アプローチは漸進的です。
ドイツには米軍の戦術核兵器が20ほど配備されており、有事には米独いずれかの提議に他方が応ずれば、それを使用できることになっています。これは、冷戦時代、ソ連軍が大軍で進攻してきた場合、小型原爆をその鼻先で使用して阻止することを念頭に置いていたものです。現在はその保持に意味があるかどうか(ドイツにしてみれば、自国領内で原爆を使用することになります)、ドイツ国内では議論もありますが、国防総省は保持を主張し、それが通ってきました。
日本では、米軍の戦術核兵器を国内に新たに配備することはできないでしょう。かつては米海軍が持つ巡航ミサイルのトマホークが核弾頭を装備していましたが、これは既に撤去されています。また新たに装備し直しても、非核三原則があるために、日本の基地を使用することができません。そのため、本件論説が提唱する、グアムにある核兵器を日本と韓国が有事に米国と共同運用する合意をしておく(但し日韓間に信頼が不足しているので、日米、米韓の二国間の取り決めとする)という案は現実的なものと思います。
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