2024年11月22日(金)

したたか者の流儀

2016年7月29日

 日本も個人株主総数5000万人時代となったようだ。実際には、一人で何銘柄も保有しているので株式保有者数は1000万人程度だろうと言われている。持ち株会に入っていて単元株保有者となったが、自分が株主になったことさえ気がつかない人もいれば、指折り数えて株主総会に参加する人もいる。総会そのものにやってくる株主は、大相撲をライブで見た人の数よりさらに少ないのでないだろうか。

 参加へのプロモーションなのか、日本では株主総会の土産物リストが出まわっている。ほぼ同様のアプローチで株主優待に関してはさらに精密に分析されている。株主優待利回りなる言葉も発見した。投資信託の分配金利回り、総会屋と同様に直ちには英語にならない言葉だろう。英語になったとしても西洋人には見当がつかない。単元株優遇は株主の平等原則に反するし、分配金利回りと言えば、100万円の預金から1年後に10万円を引き下ろして、年率10%だと言い張っているようなものだ。

株主数拡大政策の結果

 官民一体となって貯蓄から投資へのシフトを熱心に説いている我が国で、特異な現象が人気のこの株主優待制度だろう。世界中で類を見ないことだが、上場廃止対策で株主数拡大政策の結果なのだろう。

 自転車を立ちこぎして街を走る、将棋の先生はその筋の専門家として大忙しだ。株主としての三つの権利のほかに、日本的な考え方として、お中元お歳暮感覚で株主なのだから会社のものを無料でまたは優先して利用してもらおうという考えが出ても違和感は少ない。例外的に現存する外国の株主優待制度は私鉄の株主に対するものがあるが、この外国の制度を模倣して、今から100年以上以前に株主割り当ての優待制度が1899年に導入されたようだ。現在の東武鉄道の前身で同社の優先株数300株以上で、全線無料年券が受けとれるという記録がある。

 現在上場会社の3分の1程度が株主優待制度を導入している。比率も件数も上昇している。特に、クオカード、飲食金券、が人気だ。株主になるのは優待で何か特典があるからで、株主総会に出るのは弁当がもらえるからとわかりやすい。日本的経営と同様に世界で類を見ない。ひょっとすると制度疲労している資本主義の新しい道かも知れない。焼き鳥弁当がそれとは思わないが。
 

  
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