2024年11月22日(金)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年9月14日

EU競争法の違反

 ところで、今回のアップルの件については、欧州委員会で競争分野を担当するベステアー委員から発表がなされている。つまり、本件は欧州委員会の競争総局(日本の公正取引委員会に相当)が調査を行ってきている。なぜ税務の問題を競争総局が扱っているのだろうか。さらにいえば、そもそもEUには域内の課税権限が与えられておらず、課税については各加盟国の主権に委ねられている。なぜEUが課税に関して決定を行うことができるのだろうか。

 EUは、統一市場(域内市場)の形成を最大の目的の1つとしている。分かりやすくいえば、経済活動に関わる加盟国間の国境を取り払うことである。そのため、EUでは競争法(日本の独占禁止法に相当)が最重要視されている。カルテルなど国境を越えた競争を制限する行為は、統一市場の形成の妨げになるからである。

 統一市場の形成を妨げるのは、企業間の違法行為にとどまらない。EUの加盟国が特定の企業を優遇し、他の企業を差別的に取り扱った場合も、国境を越えた競争を制限することにつながり、統一市場の形成を害する。そのため、加盟国による国家補助の規制も、EU競争法の重要な柱の1つとなっている。

 つまり、今回のアップルの件は、アイルランドによる違法な国家補助に該当するのではないかという点で、EU競争法の問題として扱われているのである。


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