2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月21日

 イグネイシャスは米国の「第三の相殺戦略」に深い関心を持ち、取材を続けており、去る2月にも国防副長官と統合参謀本部議長を取材した結果を報告しています(3月30日付本欄『米国のハイテクすぎる近未来戦の全容』http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6422参照)。

 戦後の「米国の平和(パックス・アメリカーナ)」を支えてきたのは米国の軍事的優位であり、それが中ロにより脅かされるに至った今、優位を再び取り戻そうというのが「第三の相殺戦略」です。「第三の相殺戦略」に含まれる最新兵器には、論説に列挙されたもののほかに、小型レールガン(注:電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)や現在より小型の高性能爆弾などがありす。

繰り返されるいたちごっこ

 技術の優位は脅かされる宿命にあります。後発国は先発国の技術を習得しようと懸命の努力を払います。最近はサイバー攻撃による技術の窃取もあり、技術の優位を維持できる期間が以前より短くなっています。米政府当局者は、「第三の相殺戦略」は大国関係を安定化させる効果を持つと言っているとのことですが、これは「第三の相殺戦略」により、米国が再び通常戦力での優位を確立する間のことであり、中ロの必死の努力でこの優位が再び脅かされることになれば、情勢は不安定化するでしょう。

 このようないたちごっこは繰り返されるでしょうが、米国が健全な技術革新の国家的基盤を維持する限り、米国が常に優位を保つことは可能であり、それは日本を含む西側世界にとって望ましいことです。
 

  
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