ガンになって気づいたこと
初瀬:子どもの頃からリーダーシップを示していた鈴木さんですが、大学時代は何を専攻されていたんですか。
鈴木:僕は医療系の電子工学に興味がありました。当時その分野の勉強ができるのは関東ではほんの数校だけ。それで工学院大学へ進みました。
そこで転機というか、いい経験をするんです。3年のときにガンになって3年生を2回やるんですが、その入院中にいろんな医療機器を見て、僕の卒論レベルでもできる改良点があることに気づいたんです。
卒業後、僕は機械メーカーではなく第一三共という製薬会社に就職しました。就活は製薬会社や医療機器メーカーの人事部に片っ端から電話を入れて、電子工学系の学生でも面接してくれる会社を探したんです。
初瀬:ところで、どこのガンだったのですか?
鈴木:精巣ガンです。二分脊椎ですから泌尿器科にも通っていて、医者との雑談の中で「左右の精巣の大きさが変わってきたんですよ」と言ったら、医者の目の色が変わって、すぐに検査しましょうとなったんです。まさかあれがガンだとは思わなかった。
二分脊椎で泌尿器科に通っていなかったら、あのタイミングではわかっていなかったはずです。手遅れになっていたかもしれません。
初瀬:どういった症状だったのですか。
鈴木:ガンになった精巣がどんどん腫れてくるんです。言いにくい部位なので放っておくと7、8センチほどになってしまうみたいです。私は直径3cmぐらいになっていました。
手遅れになりがちな一方で、治りやすいと言われています。抗がん剤が効きやすいガンなのだそうです。
初瀬:場所が場所だけに治りにくそうなイメージを持っちゃいますけど、抗がん剤が効きやすいんですね。
鈴木:若い世代の人たち、主に20代から30代の人に多いガンなので、体力があり強い抗がん剤が打てるんです。僕もかなり強いものを打たれたので、闘病中はかなり苦しみました。
入院期間は約3カ月です。後に再発するんですが、それはもう少しあとになります。
初瀬:第一三共に就職されて何年後に再発されたのですか?
鈴木:会社の研究所には13年いたのですが、入社して1年ほど過ぎた頃です。9カ月入院して手術もしました。この入院期間は本当に辛かったです。
「抗がん剤が入っている点滴を持って医者が来ると、今まで見えていた腕の血管が体内にスゥと引いていくんです。熱も出るようになってきて、完全に体が拒否している状態でした。
初瀬:抗がん剤治療はあまりにもしんどくて、死んだほうがいいんじゃないかって思うときがあるって聞くんですけど。
鈴木:今は副作用を抑える薬が出てきたので良くなりましたけど、当時は本当に辛かったです。