次期米政権に改善のカード残す
プーチン大統領は米国がシリア停戦に関してロシアとの協議中断を発表したのを受け、報復に転じた。米国との間で2000年以降に結んだ「兵器級余剰プルトニウム処分」の合意を停止する大統領令を出したのだ。合意停止は核軍縮のこれまでの成果を台無しにしかねず、「核兵器なき世界」を掲げるオバマ米大統領にとっては大きな打撃だ。
「プーチンは完全にオバマを見限ったということだ。残りの任期が4ヶ月もないオバマ政権との良好な関係はもう必要はない。ヒラリーか、トランプかは分からないが、オバマ政権との関係をあえて最低レベルにまで落とし、次期政権に関係改善のカードを残したとも言える」(ベイルート筋)。
プーチン氏がオバマ氏の足下を見透かしているということは、米国に新政権が誕生するまでシリア内戦の停戦が実現する可能性もないということだろう。こうした中、フランスは安保理に「アレッポ上空での軍用機の飛行停止」を求める決議案を理事国に配布した。
しかし、ロシアは同決議案に拒否権を行使する意向をすでに明らかにしており、葬り去られる懸念が強い。「米ロの対立に翻弄され、シリア人がただ死んでいく」(同)。この悲惨な現実に当面、終わりは見えない。
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