9月5日に行われた香港の議会選挙において、「民主派」が70議席中、30をとり、議席を3つ伸ばしました。これにより、「民主派」が重要議案の拒否権を獲得することとなりました。このことをウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2年前の「雨傘革命」の精神は、死滅せず続いている旨論評しています。
根強い反中意識
選挙前には、一部では「制憲派(親中派)」が圧倒的に有利であると報道されましたが、選挙結果が示すものは、香港において民主化への動きや反中意識が根強く続いていることであり、それは、本件社説の言う通りです。
「民主派」内部のほとんどの議員が、「一国二制度」のもとで香港の自治権を求める穏健派ですが、中には明確な反中勢力(「本土派」)が7人含まれています。これら「本土派」には、「雨傘革命」に関係した若者たちが多く、彼らは香港の中国からの明確な独立を主張しています。今回の選挙が中国に与えた衝撃は、中国が香港に対しさらなる民主主義と自立性を与えるまで、香港市民の不満は容易には収まらないだろう、ということです。
中国政府は香港の独立を断じて容認せず、との立場をとってきました。本年5月に共産党序列3位の張徳江が台湾を訪問した際には、「ごく少数の者が香港独立の旗印を公然と掲げているのは『本土』の名のもとに『分離』を目指す行為である」と非難しましたが、『分離』はこれまで、新疆ウイグルとチベット自治区の過激派にのみ使ってきた言葉です。
香港では、昨年、書店の関係者5人が相次いで失踪した事件や、今回の選挙への介入など、「民主派」に近い人たちを締め付ける事件がいくつか起こっています。今後、中国政府が親中派の行政長官や国会議員らを使いながら、どこまで「民主派」、「本土派」を牽制することが出来るのか、緊張した不安定な状況が続くものと思われます。
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