Acorns のビジネスモデルはFinTechの象徴
口座管理料や運用残高から徴収する金額はとても少なく、伝統的金融事業やロボアドバイザー機能で黒字を狙う戦略ではない。超長期には、多数のミレニアル世代が(コラム冒頭で指摘したように)ロボアドバイザーの利用を通じて金融リテラシーが向上する経験をし、運用残高が大きく増加する可能性もあるだろう。
ただ、ビジネスモデルとして注目すべきAcornsの価値は、累積し続ける個々人のミレニアル世代の消費動向データにある。情報商社に限らず、マーケティングやコンサルティングなど様々な相手に売れるデータベースだが、共同創業者兼会長のウォルター・クルッテンデン氏は「顧客にとって有益な使い方」にビジネス展開を限ると宣言している。
旅行・宿泊・料理・アパレル等の生活に直結したEコマースサイトと提携し、それぞれが提供するクーポン、キャッシュバック、ポイントシステム等を各顧客の消費動向を掛け合わせ、経済的に最適な消費提案をするサービスを始めている。
ユーザー側から見ると、金融サービスをその他のビジネスと隔てていた壁が崩れ、総合的に満足度の高いものへと変化しつつある。あくまでも個人的な意見だが、楽ラップを運営する楽天グループには証券・カード等の金融事業と楽天市場があり、仮想通貨・少額金融・少額投資等、消費活動と金融サービスをつなぐFinTech展開で今後の期待が高い。楽天がAcornsに出資しているのは決して偶然ではない。
基本的な魅力を磨いて伝統的ウェルスマネジメントをも席巻するBettermentとNutmeg
“ITを使ってサービスしている金融会社” Nutmegに対し、”金融サービスを提供しているIT企業”と比較比喩されることが何かと多いBetterment(金融機関としての認可は受けている)だが、業界パイオニアとして知名度が高い両雄はその企業理念に共通点も多い。
“ウェルスマネジメント(個人金融)業界の不人気な要素を全て取っ払いました” と公平で透明度の高いサービスに拘るNutmeg に対し、Bettermentは “より良い投資へ (Investing Made Better)” を企業理念に掲げる。両社とも、ロボアドバイザーの魅力(前回コラムにて説明)である低コスト、中立性と高品質、そして長期分散投資の全てにおいて、徹底した顧客目線での運営を崩さない。
また、創業初期を過ぎ、そのサービスの強化に力を入れているあたりも似通っている。税効果の高いポートフォリオの推奨や節税制度の利用、そして年金制度に合わせた運用を整備し、Bettermentに至ってはそのインフラを投信会社大手Vanguardや Goldman Sachs Asset Managementを通じてフィナンシャル・アドバイザーへ展開している。