2024年12月9日(月)

家電口論

2016年10月6日

 「ソニーがソニーたる所以はどこにあるのか?」 

 ドイツ・ベルリンで開催された「IFA2016」のソニーブース。そこに鎮座していたのは、38万円のウォークマン。無酸素銅のインゴットから削り出された筐体。過剰な金メッキ。それを見た私は、目の前が真っ暗になった。

注) 38万円のウォークマン。この言い方はメディアに想定価格:3300ユーロと流れたため。日本のソニーストアでは、29万9000円(税抜き)で販売されている。

38万円のウォークマンの中身

 正式名称「NW-WM1Z」(メモリ256GB)は、現地でも話題で、人だかりがしていた。見た瞬間にビックリしたのは筐体(ケース)。「無酸素銅」の削り出し。本当にこれはビックリした。ピュア・オーディオ用モデルでは、必要な部分に高額な素材を使う。それはソニーも例外ではない。しかし、これは違う。全部が高い素材なのだ。しかも金メッキまでしてある。ところかまわず全部「金」。さすが38万円。正直「ムダにスゴい」。

 また、オーディオ・システムには「価格バランス」というものがある。最もお金をつぎ込むのは、スピーカー。一番、音質を左右する部分だから。今、高級ヘッドフォンが売れているのも同じ。これを出し惜しむと、その他の部分にお金をつぎ込んでも、効果は薄い。そういう眼で、NW-WM1Zを見直すと、ヘッドホンは想定価格2200ユーロ、その相棒のヘッドホンアンプは想定価格2000ユーロ。それに対して、3300ユーロ。決してバランスは良くない。

 同時発売のアルミ筐体のウォークマン「NW-WM1A」(メモリ128GB)の価格は1299ユーロ。これでも十分高いのだが、「NW-WM1A」はオーディオシステムの価格バランスとしては妥当な線である。「NW-WM1A」と「NW-WM1Z」の差は、メモリと筐体の差がメインである。

 ショーモデルだからという人もいると思うが、私はこの38万円ウォークマンこそ、今のソニーが、昔から言われる「ソニー」と違うことの象徴のように思えてならない。


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