トイレを借りて2万ドル……
不自由しているのは観光客ばかりではなく、ニューヨーカーも同じである。友人の知り合いの女性がある日、アッパーイーストサイドでトイレに行きたくなった。周辺は高級コンドが並ぶ住宅街で、公衆トイレもホテルもない。
とっさに彼女は近くにあったFuneral Homeに飛び込んだ。お通夜、お葬式、メモリアルサービスなどをしてくれる、日本でいう葬儀場のようなホールのことだ。受付で言われるままに記帳をして、トイレを借りて出てきたそうである。
するとその2カ月後、彼女の自宅に見知らぬ法律事務所から2万ドルの小切手が送られてきた。何と彼女がトイレを借りるために記帳したFuneral Homeでは、そのときたまたまある男性のお通夜をしていたらしい。おそらく天涯孤独だったその人物の遺産は、お通夜に来た人たちの間で分配するように、と遺言が残されていたという。
彼女はさすがに困惑して、全額をチャリティに寄付したそうである。Oヘンリーの短編のようなこの話、嘘偽りなく実話である。
Funeral Homeはマンハッタン中にあるけれど、トイレを借りる場所としては上級者クラスなので、彼女の真似をすることはお奨めしない。
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