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もちろん、提示した受注価格も両グループに比べ韓国連合が大きく下回っていたことは確かなようだが、大番狂わせの要因は韓国の官民一体となった商談にあったことは間違いない。それはまた「日、米、仏という『原子力メジャー』に韓国勢が名乗りをあげた」(高田誠・日本エネルギー経済研究所研究主幹)と言っても過言ではない。 鳩山政権は、昨年末にまとめた「新成長戦略」の中で「グリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」を打ち出した。世界的な環境意識の高まりの中で、環境・エネルギー技術の革新や輸出によって「坂の上の雲」を追い求めようということなら、その技術の中で日本にとって最大の強みは原子力であることは論を俟たない。
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1980~90年代の世界的な「原子力冬の時代」にも「日本国内では原発建設が継続した」(澤明・三菱重工業常務)ため、三菱重工、日立、東芝のプラントメーカー3社は「世界のメーンプレーヤーとして生き残った」(村上朋子・日本エネルギー経済研究所原子力グループリーダー)ことが背景にある。関係者も「原発は温室効果ガス削減の切り札というだけでなく、世界的な原子力ルネサンスの中、『成長産業』として海外に売り込む絶好のチャンスだ」(三又裕生・資源エネルギー庁原子力政策課長)と強調する。
それだけに、アブダビの商談での敗退は原子力産業関係者に衝撃を与えた。「技術力だけでは通用しない。とくに新興国向けの商談には国の関与がどうしても必要。オールジャパンでの体制づくりが迫られている」と重電業界関係者は一様に指摘する。原発技術というハードと外交というソフトがうまくミックスして初めて受注できるというわけだ。
半導体や家電で たどった道を歩むか
国内で反省の声をあげている間も、世界の原発市場は動いている。アブダビでの国際商戦敗北に続き、今年2月、日本はベトナムの原発建設プロジェクトでもロシアに苦杯を喫した模様だ。これはホーチミン市の近郊のニントワァン省内の2カ所のサイトで2基ずつ合計4基の原発を建設しようというもので、すでにベトナム国会で建設計画が承認されている。最初の2基を建設する第1期プロジェクトには、日本連合のほかフランスのアレバ、斗山重工などの韓国勢、ロシア国営のロスアトム社などの参加が予想されていたが、昨年12月訪ロしたベトナムのスン首相とロシアのプーチン首相とのトップ会談で、ロシアの受注が事実上内定したと言われている。「ロシア側が潜水艦などの兵器や原油、天然ガスなどエネルギー分野での協力など、包括的な協力関係の提案が実を結んだようだ」(原子力産業関係者)。
日本は、この計画には、2002年に日本プラント協会が日本原子力発電の協力を得て、FS(事業化に向けた現地の調査)の前段階であるプレFSを実施したほか、日本政府もベトナムの原発開発に向けた人材育成などに協力してきた。そうした経緯からいっても、何としても受注したい開発であったが、厳しい結果になりそうだ。