また、アブダビ向け商談では「直嶋正行経産相やクリントン米国務長官にはUAEを訪問していただいた」(日立関係者)とは言うものの、大統領が2度も訪問した韓国などに比べると力不足だったことも事実。ベトナム向け商談などでも、関係者の間では鳩山由紀夫首相自らのセールスを期待する声が強かったのだが、首相によるトップセールス宣言があったのは2月27日。他国に一歩出遅れた。
原発プラントメーカーも、北米市場などでは熾烈な受注合戦を演じつつも、国の積極的な後押しを受ける新興国向けビジネスでは、手を組む必要がある。三菱重工の澤常務は「確かにビジネスでは競合しているが、いがみ合っているわけではない。交流のチャンネルは残っている」と支障がないことを強調する。
UAEで韓国連合が受注できたのは、「(運転実績のある)韓国電力がリーダーになっていたため」とも言われる。電力会社を中心とした、オール韓国での攻勢が、奏功したのである。
一方日本の電力会社には、これまで海外進出に積極的になれない事情があった。それは国内における原発問題。東京電力の柏崎刈羽原発など依然、休止中のプラントがあるうえ、CO2削減に向けた稼働率のアップ。さらには核燃料サイクルの 一環としてのプルサーマル発電の定着など課題が山積している。「国内問題が片付かないのに(地元対策からいっても)海外に出て行ける訳がない」(電力会社 幹部)。
背景には、日本の原子力政策が依然として「民任せ」の傾向が強いこ とにあった。例えば高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題。エネ庁関係者は「全国でシンポジウムを開催するなど国民理解の形成に力を入れている」と強調す るが、その裏では「早く候補地を探せ、とお達しが来る」とある地方電力関係者は苦笑している。
アブダビに続いて、ベトナム向け第1期プロジェクトでも敗退した日本。政府は第2期プロジェクトでの巻き返しを計るため鳩山首相が日本企業への受注を働きかける親書を送る方針を明言。これと共に、オールジャパン体制構築の核となる、官民共同出資による新会社の設立方針を打ち出した。この新会社はベトナム第2期の受注を目的としたもので、東京電力や関西電力、日本原電、電源開発(Jパワー)などの電力会社を中心に、東芝や日立製作所、三菱重工などプラントメーカーなどが出資する見通しだ。
国内問題を押し付けられがちでこれまで海外進出に足踏みをしていた電力会社が、ようやく重い腰を上げた。ここでもやはり、国による旗振りが必要だ。日本も海外での原発受注に向け、やっとスタートラインに立ったといえる。
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