雨対策で作戦変更
リオ五輪にはWNIは5人の社員を現地に派遣した。これほどのスタッフを派遣したのは初めてのことで、ラグビー、トライアスロン、ホッケー、セーリングなど7競技のサポートを行った。
リオで開催された7人制ラグビーの場合、15人制ラグビーよりも試合時間が短く、1日に2試合もあるため、よりタイムリーな情報提供が求められる。天気予報により準備する戦術の選択肢を狭めることができ、効率的な試合運びにつながる。リオでは毎時間ごとにきめ細かい情報を提供し、直前予報は100%的中したという。
フランス戦は予想通りの雨の中の試合となった。事前に雨と分かっていたので、10あるサインプレーの中から3つを外して、7つのサインプレーだけに変更、選手のストレスを減らすことができた。また、雨だとボールが滑りやすいので、パスを減らして極力走ってゲームを組み立てる戦術を採用した。フランスチームは後半には体力が落ちるとみていたので、走る戦法が当たって試合終了直前の逆転勝ちを収めることができたという。事前の周到な雨対策と相手チームの分析が功を奏した結果だった。こうしたサポートもあって、ニュージーランドに勝利する大金星を挙げ、メダルには届かなかったがフランスにも勝つ成績を収めた。
真価が問われる東京オリンピック
リーダーとして現地に行った浅田佳津雄さんは「リオに行ったのは東京五輪のためで、サポートする上で何が足りないか、どの観測精度を上げなければならないかが分かったので、東京で生かしたい」と指摘する。
東京五輪の1年前の19年にはラグビーのワールドカップ東京大会が控えている。浅田さんは「ブラジルと東京の大きな違いは、日本の夏はゲリラ豪雨、熱中症、台風などいろいろな要素が入り混じるので、予想の難易度が上がることだ」という。それだけに、東京五輪より1年前の19年に開催される日本でのラグビーW杯でWNIの情報提供の精度が試され、東京五輪で最終的な真価が問われることになる。
今後に向けては「大きな国際大会で気象情報を提供するのは社会的な義務であり、ビジネスは二の次だ。東京をきっかけにしてスポーツをする際には気象データを活用するのは当たり前のようにしたい。それが結果的にスポーツビジネスにつながる」と先を見据えている。
マリンスポーツでは、今回のリオ五輪にも活かされて、ヨット、セーリングなどマリン関連の競技も幅広くサポートした。潮流の流れ、風向きなどが試合の勝敗を決定的に左右する要因になるため、情報提供を受けた競技団体からはどこも高く評価された。これまでのいくつかのスポーツ競技団体への情報提供は無料で行われているが、より試合の成果に直結する正確でリアルタイムの予報ができるようになれば、WNIとしてはビジネスにもつなげていきたい狙いがある。
近年、気象データを蓄積して活用していく動きがあるが、まだ活用しきれていないのが実情だ。雨、風、気温、湿度などの気象データをそれぞれの競技や選手のコンディション作りなどにどのように活かしていくか、未知の分野になっている。それだけにこの分野の責任者の浅田さんは「これからは試合に勝つための情報を提供していきたい」と意気込んでいる。