情報の格差
ラグビーではすでにすべての選手の試合中の動きがGPSを使って測定できるカードが背中にセットしてある。これにより、試合中の走行距離、瞬発的なトップスピード、スタミナの落ち具合など、あらゆる選手個人のデータが記録され、これが試合の戦術、選手起用に活かされている。近い将来にはこうして蓄積されたデータがいま流行のAI(人工知能)の最新技術を使って分析され、選手起用などに活かされることになりそうで、スポーツの世界では気象データを含めた情報武装は当たり前になりそうだ。
ただ、お金のある国、競技団体だけがこうしたデータの恩恵に浴して、お金のない所は受けられないようになると、情報格差問題が出てくる。プロスポーツの場合はある程度仕方ないが、アマチュアスポーツでこの問題が浮上してくるとスポーツの醍醐味が薄れることになる。このため、WNIは「こうした気象情報は皆さんに使ってもらえるストーリーを描くことに意義があるのではないか」とみており、有料と無料の気象情報サービスをどこで線引きするかも課題になってきそうだ。
北極海の氷を衛星で観測
このほかWNIは、来年1月頃にロシアから打ち上げられる予定のロケットに積み込まれた衛星(WNISAT-1R)を使って北極海の氷の状況を細かく(数百㍍単位の解像度)観察し、氷の分布など高精度の情報を、北極海航路を運航する海運会社に提供しようとしている。これにより、海氷との衝突によって船体損傷の危険性がある北極海航路をより安全に航行できるという。現在、同航路はすでにいくつかの海運会社が運航しているが、冬季以外でも氷のリスクがつきまとうため、安定的な輸送には必ずしもなっていないという。
海運会社によると、アジアから欧州に荷物を運ぶには、スエズ運河を通るか、南アフリカの先の喜望峰を回るかしかない。これに冬を除く期間中の北極航路が加われば3つの航路になるため、航路の選択肢が広がる。しかも、北極航路の長さはスエズ運河を通るのより3割ほど短いため、ロシア側に北極海の通行料や先導する砕氷船の費用を払ったとしても輸送コストを節約できるという。
WNIから北極海航路支援に関する提供を受けるのは欧州やアジアの海運会社で、日本の会社は入っていない。日本の海運会社としては、北極航路はまだ安全性が確立してないためリスクがあるとみており、状況を注視している状況だ。