長らく「男性中心の発想や同一性」を重んじてきた日本の経営者は、ダイバーシティーというとすぐに女性に活躍してもらうことに目を向けがちだが、そうではない。性別、国籍、年齢、障害の有無にかかわらず、企業が多様な人材を抱え、自己と他者の行動心理を分かるようになることが、ダイバーシティーを獲得する一番の近道だ。
まして今後は日本の生産年齢人口が減少し、仕事の同一性は人間よりも優秀なAIやロボットが担保する可能性が高い。これまで経験したことのない経済・技術のダイナミックな環境の変化が起きるだろう。人間は今まで実現していないクリエイティブなものを作らなければ仕事をする意味をもたなくなる。
幅広い多様な知識と発想を持った人材を組み合わせて、化学反応を起こさなければクリエイティブなものは作れない。それを実現するような「気づき」を誘発するにはダイバーシティーを手に入れる必要がある。創意工夫にあふれた人材、新しいトレンドを積極的に探せる人材等が必要だ。異なる文化の経験をしている人材の特徴をいかに生かすかがカギとなる。
ダイバーシティーの実現にあたり、単に女性の採用人数を決めていたり、女性管理職の数にばかりとらわれている経営者がいるなら、今すぐ人事はそれを改めることを進言すべきだ。
とはいってもむやみやたらに人材を招きいれればよいわけではない。グローバル企業では会社の目指すべきビジョンを理解し、従業員が拠って立つ倫理観を持つという意味で「integrity」という言葉が良く使われる。共通の倫理観を持たずにダイバーシティーを獲得してもただバラバラの集団を作るにすぎない。
ダイバーシティーがもたらす恩恵を受けるためにも、社員の結束を維持するメッセージを発信し続けることが人事の重要な役割だといえる。
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