2024年11月24日(日)

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2010年3月23日

 こんな危機的状況であるにもかかわらず、日本国債の利回りは1%台前半で推移している。米欧をはるかに下回る低金利であり、金融関係者の間では「暴落しないドルと日本国債は2つの大きな謎」と言われるほど。何故、こんな不思議な現象が起こるのだろうか。

各国の国債等所有者別内訳
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 いくつもの要因が重なっている。ひとつはデフレ。総合的な物価指標であるGDPデフレーターは09年10~12月期には前年同期比でマイナス3%を記録した。物価下落分も加味した実質金利でみれば、日本の国債利回りは決して低くない。

 とはいえ、財政悪化が深刻になれば、債券市場で容赦ない売り浴びせが起きて不思議でないはず。この点で、外国人投資家による国債の保有比率は数%にとどまり、90%以上が国内勢によって保有されているという投資家の構造が無視できない。外国勢は09年8月の総選挙後、日本国債の売り手に回っているが、売り崩せないでいる。

 ならば、日本の投資家は「愛国的」なのかというと、そんな単純な話ではない。デフレの下で短期金利はほぼ0%で、株式には下げリスクが伴い、外貨建て資産も円高で為替差損を被る怖れがある。八方塞がりのなか、国債が消去法で購入されているに過ぎない。

 個人金融資産の半分以上が預貯金に流れ込んでいるが、預貯金を集めた銀行や郵便貯金がせっせと国債を購入しているのだ。1400兆円の個人金融資産が国債に流れ込んでいるお陰で、長期金利は極めて低位に安定している。財政危機が叫ばれても、どこか馬耳東風の感が拭えないのはこのためだ。

 もっとも、こうした低金利は体力の弱った病人の体温が低下したようなもの。企業や家計が先行き不安から投資や消費を抑え、手元に資金を抱え込んでいる。その結果、経済全体が慢性的な需要不足に陥っている。需要不足分はバラマキともいえる財政支出で補っているが、税収不足もあって財政赤字が膨らむ。そんな経済停滞の悪循環だ。

 短期的には企業や家計の余剰資金が財政を支えているので矛盾は露呈しないが、火消し壺のような資金フローの先には何の展望も開けない。いま必要なのは将来不安を和らげるとともに、成長の見取り図を再び示すことだ。

内部留保課税は筋違い

 民主党政権は年金、医療、介護、教育、子育てなど家計の不安を和らげようとしている。それはそれでよいが、財源の見通しが立たないバラマキとなっては、かえって不安感を募らせかねない。企業の稼ぐ力をどう強め、成長力を立て直すかの見取り図がない。

 共産党の志位委員長との会談で、鳩山首相は企業の内部留保への課税に前向きの意向を示した。企業が従業員から搾取した資金をたんまり懐に抱えているとでも思っているのだろうか。実際には先行きへの不安が投資にブレーキをかけ、経済の停滞を招いているだけなのに、首相は経済と金融のイロハもご理解ないらしい。首相発言は二転三転するものと割り切っていたせいか、株式市場で売りの雪崩が起きなかったのは不幸中の幸いだ。


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