応募ゼロで廃止、付き合いきれない民間
大阪では、既に事業困難であると判断されて終わってしまった、クールジャパンフロント事業なるものがあった。12年に「日本のおもちゃ・マンガ・アニメ展」を開催したものの、当初計画6000人のはずが、2120人しか動員できず、約1300万円の大赤字を記録。さらに、14年に同事業を推進する民間企業の公募を行ったところ、応募企業が1社も現れず、15年には正式に府議会で同事業の廃止が決定。累積で4700万円もの税金が投じられた上での幕引きだった。
そもそも、民間企業公募の際のヒアリングでは「『クールジャパン』というテーマでビジネスを行うことが難しい」という回答が数多く寄せられていたという。
税金を使えば結局は損得無視で実行できるが、民間企業からすれば「儲からない適当なクールジャパン事業」なんかに付き合うようなことはあり得ないということなのである。ある意味、民間のほうが至極真っ当な結論を導き出したと言える。なぜ未だに全国各地でクールジャパンを切り口にした地方創生事業が展開されるのか、というのもこのような事例から分かる。
儲からないクールジャパン事業の実像が垣間見られる。
この手のマジックワードとなると、もともと進んでいた事業の予算獲得のために流用されることがある。東日本大震災の後に、あらゆる予算が「震災復興」という名をつければ通るということで、沖縄の道路整備まで含まれていて問題になったこともあった。
無線LANやTPP対策までも!?なんでもありのクールジャパン
クールジャパン政策は、最近では「ローカルクールジャパン」なる言葉が誕生。この名目になると、地域でもともとあった様々な事業がある意味なんでも「ローカルクールジャパン」と銘打って予算申請することが可能になっている実情がある。
その典型の一つが、15年ローカル版クールジャパン政策で総務省が打ち出した「無線LAN」を整備するという事業である。「観光や防災の拠点における来訪者や住民の情報収集等の利便性を高めるため、公衆無線LAN環境の整備を実施する地方公共団体等への支援を行う」とある。が、このどこにいわゆるクールジャパンの要素があるのだろうか。頭を抱える。
さらに、経済産業省のローカルクールジャパンでは「TPP対策JAPANブランド等プロデュース支援事業」を行っている。TPP対策までもがローカルクールジャパンとセットになっており、1億5000万円の予算が投入されている。
ローカルクールジャパンは、世界から人気のあるコンテンツを打ち出すどころか、地方にあるものを無理やり海外に押し出していくことに補助金をつける業務になりつつある。