2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2016年11月28日

 映画製作の専門性を持たない産革と監督官庁の経産省はどのようにして60億円もの公金投資を決めたのだろうか? ANEW設立時、代表取締役は産革の執行役員が務め、社外取締役は執行役員と共にプロジェクトチームでANEWを設計したその部下、監査役も産革役員という構成であった。当然、株主も100%産革である。

 さらにANEWを監督する立場の経産省も職員を出向させていた。国民財産の運用がこうした専門性に乏しく、ガバナンスも効きにくい体制の中で行われ、「クールジャパンらしさの追求」という主観的な内部評価の基準の中だけで60億円もの公的資金を注ぐ決定をしたのである。この件に関し経産省に情報公開請求を行うも、こうした官民ファンド等の株式会社を経由した公的資金に関する公文書は存在しない、もしくはすべて不開示となっており、国民に対し情報公開が行われない制度になっている。

 産革には客観性、中立性を保つための社内組織・産業革新委員会が存在しているが、ANEWへの投資決定を見る限り、この組織が客観性と独立性を持っているようにはうかがえない。これについては、14年の産革投資先の監査未実施に対する改善要求に関わった財務省職員も「ANEWのような自分で自分に出資するような投資は通常公的ファンド運用のルール違反にあたる」との見解を語る。

 ANEWの5年間の事業評価についても客観性を欠いている。経産省は「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」に基づき「産業革新機構の業務の実績評価」を行っている。これによると、経産省は投資実行後も各投資先企業についての財務情報、回収見込み額、出資に係る退出(EXIT)方針、投資決定時等における将来見通しからの乖離等を精査していることになっている。

国会で行われた「経営は順調」の答弁

 しかしこの間、同メディア・コンテンツ課課長、大臣官房審議官は、ANEWについて「映画が実際に作られ、配当により3年で投資回収が始まる」とあたかも経営が順調であるかの旨の報告を国会等で答弁している。


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