●小さいときから自分にプレッシャーをかけてきたんですか?
――そんなことはないです。まぁ、普通の田舎の優等生だったんじゃないかな。あまり勉強はしなかったけど、社会も国語も算数も得意でした。あと、手先が異様に器用でね。ガンプラを改造したり。作ることはなんでも得意だから、そのうち家を造ろうかと。もしくは、離れ小島を買って文明を作ろうかな。
●小学生のときにコンクールで賞をとって絵が好きになったとか。
――昔は画家になりたかったんです。でも、自分は絵も論理的に解析したくなるタイプです.でも職業にするほど才能が無いように思ったのであきらめた。だからシャガールに憧れます。あの人は何も考えずに描いている。そこに強烈に人間味みたいなものを感じる。ピカソはまだ数学的というか、科学や技術でたどりつける範疇にある気がするけど、シャガールはもう人間そのものの写し絵みたいだと感じます。
●性格的にはどんな子だったんでしょうか。
――矛盾に敏感な子でしたね。たとえば大人の矛盾した言葉に。それを自分の中で整理し続けるということを昔からやっていました。大人から「人の気持ちを考えなさい」と言われたときには、なんて難しいことをいうんだ、そんな難しいことをみんなはやっているのか、と焦りましたよ。
●たとえば、研究者以外の仕事をやろうと思ったことはあるんですか?
――いえ。修士のときに、普通の会社員には絶対なれないなと思いましたから。科学や技術なら信用できるけど、わけのわからない奴の下でなんか働けるか、と思って。就職活動はしましたよ。当時はバブルまっさかりで、会社訪問するとお金がもらえたんです。就職する気はないのに行ってお金をもらって、仲間と車でいろんな会社を回りました。
●ちなみに、ジェミノイドの股間はどうなってるんですか?
――性器は、実はつけられるようにしてあります。人との関わりを見るには、性差がどうしても必要だから。人が人に惹かれる仕組みはセックスに非常に関係があるはずです。たとえばサルやホタルの研究ではセックスを根底にした議論がなされているのに、人間になると途端に、性の問題と社会の問題がいっしょに議論されなくなる。それはおかしい。科学者はモラルを捨て切らないといけない。もしそれが真理の探究を阻害するのであれば。
でも最近はそうもいかない状況があります。我々は税金で研究しているわけですが、税金を払う人は研究を同じレベルで理解しているとは限らないわけで。昨年の事業仕分けで、二番ではいけないのか、という発言がありましたが、そんなのダメに決まってます。一番をとる以外は研究じゃない。そこがわかってない人に税金を割り振られる国では、いろいろ気をつけなければいけないんです。
●性の問題は、これからガンガンやっていくつもりですか?
――十分な理由づけができれば、一気にいきます。中途半端にやるのが一番よくない。というのは、アンドロイドのときにも思いました。中途半端なものを作ったらバカにされるだけ。やるからには迫力あるものを出して、くだらない議論を飛び越えたところで認めてもらう以外にない。