――液体ミルクの導入がこれまであまり話題にならなかったのは、少し待機児童の問題に似ているなと思いました。不便さや悩みを抱えているのが一時期で、その時期が過ぎると保護者はまた別の育児に関する問題に行き当たるので、訴えている暇がない。
末永:そうですね。次のミッションが始まっちゃう。ミルク終わったら保育園に入れなきゃ、保育園に入れたら仕事復帰。過ぎ去ると次のものが迫ってきちゃうんですよね。
「ニーズが伝わってないなら伝えよう」と署名
――末永さんは2014年にお子さんを出産されて、その後でChange.orgで署名活動をスタートされたんですよね。これまでに4万人以上が署名しています。
末永:そうですね。4月に出産して、半年ほどミルクと母乳の混合で育児をして、10月頃から調べ始めて11月に署名を開始しました。始めて1カ月くらいで、1万件ぐらいパッと署名が集まったんですね。いったん広まった後はあまり動きがなかったのですが、今年4月に熊本地震があって、そのときにもう一度署名が広がりました。危機感が強くなったからだと思います。そうこうしているうちに、液体ミルクを知っている人の母数が増えた気がします。
――署名を始めたきっかけを教えてください。
末永:私の場合、生後半年を過ぎたらミルクを飲んでくれなくなって母乳ばかりになったんですね。ミルクを作る手間はそこでかからないようになったんですけど、それをきっかけに「そういえば液体ミルクってあったな」って思い出して調べてみました。調べてみたら、厚生労働省が認可していないからという情報を見つけたので、本当かな? って思って厚労省に電話してみたんですよ。「なぜ認可しないんですか?」って。
そうしたら、申請が来ていないからやっていない、止めてるわけではないよという回答で。そうなんだと思って、今度はミルクメーカーさんに電話したんです。メーカーさんは「そんなに要望がたくさんあるわけではないので、作る話になっていません」と。
――それなら、要望があることを署名で示そう、と。
末永:(厚労省もメーカーも)皆さん、とりあえず悪気があるわけではなさそうだぞって思いました。ニーズがあることが伝わっていないから、どれだけニーズがあるかを集めてみます、という気持ちでしたね。文句ばかり言うとメーカーさんとかも困っちゃうのかなと思って、それは言わないように気を付けました。
――なるほど。
末永:私も厚労省に電話した時点では、「なんで許可してくれないんだろう? 大変なのに」と思っていました。厚労省がまず法律を作って、作るメーカーを募集するというわけにはいかないのかと聞いたら、「厚労省はミルクの専門家ではないから、(専門家である)メーカーさんからやりたいものが出た段階で、そこをたたき台として一緒に考えていく」と言われて、確かにそうだなと思いました。みんな悪意がないんですよね、思ったほど(笑)。