2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年12月30日

カストロはベネズエラの富をしゃぶりつくした

 カストロに最大のチャンスが訪れたのは2002年、米国に後押しをされた、財界、軍部、国営石油公社、民主勢力によるチャべス追い落としのクーデターが失敗したときだった。危うく生命の危険に瀕して以来、チャべスは自国民を信じなくなった。暗殺を恐れたのである。

 カストロはカラカスの大統領官邸に料理人、ウェイター、専属医を派遣した。大統領警護官のトップもキューバ人となった。両国は150もの協力文章を署名した。キューバの石油精製所、発電所、道路、鉄道、ホテルなどにベネズエラの資金が投じられた。一方、カストロはスポーツ、農業、電気通信に至るまで専門家と称される4万5千人をベネズエラに派遣した。うち、3万3000人が医療関係者である。

 これら人的サービスが原油や投資などの支払いに充てられた。一人当たり年8万2000ドル。総計36億9000ドル。キューバ総輸入額の40%前後をベネズエラが占めることを考慮すると、キューバには実にうまみのある取引だった。しかも、キューバ人専門家には月1500ドルが支払われた。実際に彼らの手に入ったのは、100ドル以下で、残りはカストロ・キューバに支払われた。その後、キューバ人医療関係者は、薄給とベネズエラの経済危機から続々とコロンビアへと逃げ出した。

 チェ・ゲバラ存命だったころには、革命の輸出はキューバの代名詞だったが、今はもう余裕がない。代理人となったのはベネズエラだった。

 チャべスは、ボリビア、エクアドル、ニカラグア、アルゼンチンなどの左翼政権には資金協力を惜しまなかった。中東のシリアには石油公社のオフィスを置き、レバノンの反米勢力ヒズボラには国営会社コンビアサの飛行機で戦略物質のコカインを送った。コロンビアの革命軍(FARC)にはコカイン精製のための尿素と、武器を送った。

 チャべス政権下、世界一の犯罪大国となった観光国ベネズエラは閑古鳥が鳴いた。観光客が来るのはキューバだった。キューバはアメリカと寄り添い始めた。そして多大な利益を得て、ベネズエラは収奪された。カストロ・キューバはベネズエラの富をしゃぶりつくした。

 なぜ、チャべスはこれほどカストロに傾倒したのか? 自身の100年王国を作りたかったからである。40年間も独裁政権を保つカストロは、父親であり、憧れであり、指導者だった。チャべスは叫んだものだ。「2021年まで大統領だ!」


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