前向きに読み解く経済の裏側

2016年12月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

借り手をハイリスク・ハイリターンに誘導してしまう可能性も

 さらに悪いことが起きる可能性もあります。今まで堅実な商売をしていた企業が、ハイリスク・ハイリターンな企業に変身してしまいかねないのです。ハイリスク・ハイリターンな企業にとって銀行借入は、「勝てば自分の儲け、負ければ銀行の損(自分の損は資本金だけ)」というギャンブルになり得るからです。

 多くの銀行が金融庁の指導に従った結果として、多くの企業がハイリスク・ハイリターンなビジネスを始め、失敗した場合の損失を銀行に押し付けるとすれば、銀行業界の将来は真っ暗かもしれません。

 目利き能力のない人に、目利きの得意な人と同じ仕事を要求するのは、怪我のもとです。銀行員は、目利き以外の分野では、総じて優秀ですが、目利きの能力は決して高くありません。それは、そうした訓練をほとんど受けていないからです。

 「高度成長期には、創業間もないソニーやホンダの事業性を見極めて融資をした立派な銀行員がいたのに、今はいないのか」と嘆く人がいるかもしれませんが、それは違います。当時も今も、目利きの得意な少数の銀行員と、目利きの苦手な多数の銀行員がいます。

 当時は、目利きの得意な銀行員がソニーなどに融資し、それ以外の銀行員は担保と保障に頼った融資をしていました。今もそうです。それを、「目利きが得意でない銀行員も、担保に頼らず目利きをしろ」と言うのは、「高度成長期の銀行を見習え」ということとは全く異なるのです。

 世の中には、様々な仕事があるのですから、適材適所を目指しましょう。銀行員に適した仕事は、他にいくらもあるのですから。

  
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