弾劾棄却が保守与党に有利とも限らない、重要なのは怒った民心の行方
では逆に弾劾案が却下されたらどうなるか? 弾劾決定、棄却に関係なく、今回の騒ぎで保守与党が受けた打撃は致命的で、大統領選挙において絶対的に不利な立場に立たされているのは変わらない事実である。弾劾案が棄却され朴大統領が職務に復帰したところで、風向きが変わるとも思えないからである。完全なレームダッグ状態、そして野党が国会議席の過半数を占めている状況で大統領に何ができるのか。むしろその状況は、野党候補に有利に働く可能性もある。
なぜならば、野党候補たちに「時間的余裕」ができるからである。 大統領選挙が予定どおり12月に行われるとしても、いずれ現在の役職を辞任しなければならないが、支援組織を整えて資金を集める時間的余裕ができる。また、変わりやすい民心の行方を見極め、当選可能性が低いと判断した候補は出馬を諦めることで現職を維持し、次の大統領選挙を狙うことも可能となる。
それだけではない。弾劾が棄却されれば、国民は怒り、失望するだろう。そして「また保守与党が再執権するかもしれない」という危機意識は、野党支持者の結束と団結をもたらすことになるだろう。
実際、2004年盧武鉉大統領が野党により弾劾の危機に陥ったとき、野党の横暴に怒った国民は同年の総選挙で盧武鉉が属する開かれたウリ党を支持して圧勝をもたらし、弾劾を主導し国民の怒りを買った野党は惨敗した。弾劾決議の前の盧大統領の支持率は低い方であったが、「国民感情」つまり国民の逆鱗に触れた野党は総選挙で惨敗を喫したのだ。
ただし、朴大統領の弾劾事態がその時と大きく異なるのは、盧大統領の時は国民が棄却を歓迎したが、今回は国民の多数が弾劾を強く支持しているという点である。従って、今回もし弾劾が棄却されたら、ろうそくデモでも見られた国民の怒りは、憲法裁判所と職務に復帰する朴大統領に止まらず、年末の大統領選挙で現政権に対する反発、つまり野党への支持で現れる可能性が高い。