前向きに読み解く経済の裏側

2017年1月9日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

米国一国主義に伴い、中東地域などで紛争が多発するリスク

 米国が、「世界の警察官」であることをやめ、米国一国主義に走るとします。その場合でも、日本や欧州は同盟国ですから、簡単に見放したりしないでしょうが、懸念されるのは、米国が中東地域への関与をやめることです。

 中東地域は、大産油国が多いことから、米国の国益を考える上で重要な地域でしたが、昨今のシェール・オイル掘削技術の発展等により、米国が原油の自給自足が出来るようになりつつあります。そうなれば、米国第一主義の観点から米国が中東地域の安定に関心を示さなくなる可能性が高まるでしょう。

 米国は原油が自給自足出来るかもしれませんが、原油等のエネルギーの殆どを輸入に頼り、しかも原油の圧倒的大部分を中東地域からの輸入に頼っている日本にとっては、これは大きなリスクです。

 今年何かが起きるというわけではないでしょうが、たとえば中東で紛争が多発するようになるかもしれません。最悪の場合、中東全体がシリアの内戦のような状態になりかねません。

 こうした動きを加速しかねないのが、産油国の窮乏化です。原油価格が暴落したまま回復せず、産油国がようやく減産に合意したものの、原油価格の戻り幅は限定的でした。さらには、米国のオイル・シェールの技術進歩によって彼等の採算ラインが急速に低下していることから、原油価格が本格的に戻ることは難しくなりつつあるとも言われています。

 そうなると、潤沢な原油輸出収入を用いて国民の税金をゼロにするなど、究極のバラマキ政策で政権を安定させてきた中東諸国の政権運営が不安定になるかもしれません。国内で不満が高まり、革命に繋がるかもしれませんし、国内の不満を逸らすために対外的な強攻策に出る無謀な政権が出て来るかもしれません。

 いずれにしても、これは日本経済にとって大きなリスクです。幸い、そうした事態が今年中に起きる可能性は大きくありませんが、少し長い目で見た場合には巨大なリスクであるわけで、そのことはしっかり認識しておいた方が良さそうです。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

 

関連記事

新着記事

»もっと見る