そんななか、フォルクスワーゲンなどがさらにEVに力を入れることを発表している。燃費規制が弱くなれば、EVの販売には逆風になるはずだが、なぜだろうか。その理由の一つは、CPPと異なりCAFEの無効化あるいは弱体化が難しいとみられていることにある。具体策の作成を州政府に任せたため、例えばEPAが何もしないことにより無効化可能と言われるCPPと異なり、CAFEは既に規制法ができており、オバマ政権末期にEPAは2025年までの規制値を決めてしまった。この規制の実効性をなくすとトランプ政権は主張しているが、そのためには新たな法を定める必要があり、かなり難しいとの見方が業界では主流だ。
もう一つの理由は、全米のEV販売の50%を占めるカリフォルニア州の規制の存在だ。連邦政府とは別の規制値を設けており、自動車メーカーはZEV(二酸化炭素排出量ゼロ)車の販売が必要になる。それにしても、図-1の通り収益も未だ大きく伸びないEV専業のテスラにとっては、トランプ政権誕生はマイナスのはずだ。
多くの投資家がそう考えたであろうことは、大統領選直後の1カ月間の株価が示す通りだ(図-2)。
その後の株価の上昇は、テスラCEOイーロン・マスクが大統領を取り巻く企業家の集まり戦略・政策フォーラムに参加するなどトランプ大統領との近い関係が明らかになったからだろう。投資家はマスクと大統領との関係を評価したが、それには理由がある。
イーロン・マスクの事業とトランプ政権
マスクは大きな案件をぶち上げ注目を集めるが、できないことが多いと米国では批判する人もいる。2013年に発表されたサンフランシスコとロサンジェルスを30分で結ぶハイパーループ(パイプの中を高速で移動するシステム)プロジェクトなどに対する批判だ。
昨年12月下旬には、スペースXの従業員が会社の前でトラックに撥ねられる事故があった。事故の瞬間の防犯カメラの映像がローカルニュースで公開されている「http://www.nbclosangeles.com/news/local/hit-and-run-video-hawthorne-crosswalk-search-spacex-408680785.html」。
この事故を受け、マスクは早速ツイッターで、トンネルを掘るとつぶやいた。トンネル掘削用機械の事業を手掛け、スペースXからロサンジェルス国際空港の近くまでトンネルを掘るというものだ。マスコミではテスラがトンネル掘削事業に参入かと報道された。
トンネル掘削事業は規制の山との戦いになるが、マスクがトランプ大統領の戦略・政策フォーラムなどに参加していることから、スペースXは有利に事業を進めることができるとの見方もある。