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2017年3月13日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年生まれ。85年に早稲田大学卒業後、フリーランスとして活動。「堤清二 『最後の肉声』」(文藝春秋)で、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞。近著に『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』(文藝春秋)。

空港を乗っ取られたベトナム
館内に響き渡った高笑い

 国家そのものへのサイバー攻撃はロシアによるエストニアへの攻撃を嚆矢とする。2007年のことだった。電力、金融システムがダウンしたエストニアは国としての機能を奪われた。

 その3年後。米国防総省が「QDR(4年ごとに行われる国防計画見直し)」の中でサイバー空間を陸、海、空、宇宙に続く「第5の戦場」と位置づける。以来、サイバー空間を巡る国家間の攻防は深刻さを増し続けている。

 日本版NSCである国家安全保障会議のある幹部は、「特にこの2年間、今までのサイバー攻撃とはまた1つ次元の違うような状況になり始めている」と指摘する。

 ベトナム。最大の都市ホーチミン市にあるタンソンニャット空港を始め、国内の空港の電子掲示版に異常が起こったのは昨年夏。電子掲示版に突然「南シナ海は中国の領土」の文字が並び、館内放送では「ベトナム、フィリピンはくたばれ」という声が高笑いとともに空港中に響き渡った。中国のサイバー攻撃で空港が乗っ取られたのだ。

 南シナ海の領有権を巡ってフィリピンがオランダ・ハーグにある国際仲裁裁判所に提訴していたが、裁判所が中国の主張を退け、ベトナムがそれを歓迎した直後のことだった。

 ベトナムが中国のサイバー攻撃に曝された数カ月後、サウジアラビア政府のシステムがサイバー攻撃によってシステムダウンに追い込まれた。空港も狙われたが幸いにして事務管理システムだけの被害に留まった。サウジアラビア政府は詳細を明らかにしていないが、重要インフラである政府の中枢システムは辛うじて守られたようだ。

 数年前、同じくサウジアラビアでは、世界最大の石油会社「サウジアラムコ」のシステムがサイバー攻撃を受け、システムダウンに追い込まれた。以来、サウジアラビア政府はサイバー攻撃に対し、万全の態勢を取っていると米国政府などには説明をしていたのだが。ちなみに、サウジアラムコのシステム修復には内々に日本から富士通のエンジニアが呼ばれ修復作業に当たったことは知られてはいない。

 サウジアラビアを標的にしたのはここ数年力をつけてきたと言われるイランのサイバー部隊。もちろん、国家主導の部隊だ。

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