石原慎太郎元東京都知事(84歳)は、3日の午後、日本記者クラブで会見し、東京都の築地市場(中央区)から豊洲市場(江東区)への移転問題について「知事として移転を裁可した責任はあるが、土地売買や土壌汚染問題の交渉の経緯について、専門的な知識、能力がないので関係部局にすべて任せた。交渉内容について具体的な判断をした記憶はない」と述べ、疑問点には答えなかった。その一方で、「豊洲市場の安全性は多くの科学者が認めており、小池百合子知事はやるべきことをやらず、築地をほったらかしにして、ランニングコストや補償がべらぼうに掛かかっている」と豊洲への移転に慎重な姿勢の小池知事を厳しく批判した。
既定路線
豊洲移転を誰が決めたかについては「私は必ずしも移転には賛成ではなかったが、知事に就任した1999年の前から既定路線だった。その後も各部局と都議会も含めて総意として決めたことで、私一人の責任と言うよりも行政全体に責任がある。部下から上がってきたことに念を押したが、都庁全体で上がってきたことなので、認可せざるを得なかった」と釈明した。石原知事は会見を通して「私は専門的な知見はないから、具体的な交渉は専門家に任せていたので、詳しいことは分からない」という趣旨の発言を繰り返した。
豊洲市場の土地の売主だった東京ガスとの売買交渉で疑問点の一つとされている、東京都が瑕疵担保責任を放棄する契約を東京ガスと締結した際に知事の公印が押されていることについても「そのような契約をしたという報告は受けていなかった」と言い逃れに終始した。豊洲市場の主要建物下に盛り土をせず、空間を設置した点については「具体的に判断した記憶はない」と述べるなど、注目される問題についての真相は明らかにならなかった。
早急に移転を
石原氏は「築地市場はわずかな地震でも屋根の一部が落下する危険性があるなど老朽化している。お世辞にも清潔とは言えない状態だ。新しい時代に対応した機能を持った市場でなければ、産地や顧客のニーズにも答えられず、時代遅れの市場になる。このままでは築地市場はじり貧になる。業界の大多数は豊洲への移転を望んでおり、慎重な議論をするという美名のもとに移転を先延ばしするのは混乱と不安を招く」と指摘し、小池知事のやり方に強く反対する考えを示した。
さらに「豊洲移転をしないことは、科学が風評に負けたことになり国辱(こくじょく)で、豊洲は安全だと指摘している科学者から、世界に日本が恥をさらすことになるという忠告ももらっている。小池さんは都知事の権限で一刻も早く移転を行うべきだ。都議会も移転問題をだらだらと審議している。議会が決めかねているのなら、都知事が大きく歯車を回すべきだ。それをしないのなら、知事として不作為の責任があるので、告発すべきだ」と強調、移転を急ぐべきだと訴えた。
石原氏は改めて都議会の百条委員会には出席する意向を示した。都民から移転問題について訴訟が起きていることについて「移転は都議会を含めて決めたことで、私個人で決めたことではないので、(個人の責任が追及されるのであれば)そのことに対しては不当であるとして提訴する」との考えを明らかにした。