――ロボットAI農業の可能性をそこで確信したと。
窪田:第4次産業革命という大きな流れがあって、それが農業の中でどれだけのインパクトを持つのか取材していたわけだけれど、あれを見てインパクトの大きさを心底感じた。あらゆるものがインターネットにつながって勝手に動くのがIoTの世界。ただ、オプティムのドローンを目にする前はその可能性を狭くしか捉えられていなかった。
たとえばIoTセンサーが田んぼに設置してあって、人間があらかじめ設定しておいた水位に合わせて、水門が自動で開閉するようになり得るというのは、なんとなくわかる。だけれども可能性はそこで終わらなくて、もっとモノが自ら意思を持ったように動き始めるところまで行けるんだと。オプティムのドローンからは、ロボットが自ら学んで自ら行動していくということの入り口を示してくれたという印象を受けたんです。
――農業とロボット、AIは一番縁遠い世界というイメージがあります。そうではなくて、逆に農業とこうした技術は強力に結びつくと主張していますね。これはなぜなんでしょう。
窪田:まず日本の農業は他の産業と比べて圧倒的に高齢化していて、農家がこれから一気にやめていく。日本農業はこれからろくに生産できないという事態にも陥りかねない。その危機においてこそ、まさに新しいものの入り込む余地が生まれるわけで、農業サイドからそういうテクノロジーが求められるようになると考えているんです。
国内におけるAI研究の第一人者に東京大学の松尾豊特任准教授がいますが、整然と並んでいるものよりもサクランボのような整然としていないものを収穫するようなことにおいてこそ、ディープラーニングは強みを発揮すると言っているんです。工場のラインが整然としていてどの土地に持って行っても工程が変わらないのに対して、農業の現場は場所によって環境が違うし、農家のやり方も違う。そういう中でもすべてを認識し、自動化できると。面白い世界がやって来るんだなと感じますよね。
――ロボットAI農業の普及するめど、たとえば大規模農家ならそこそこ使っているというようなレベルになるのはいつごろでしょう。
窪田:それは地域によってだいぶ違うと思う。まず一番早く普及するのは北海道であり、北海道の中でも十勝地方とか、空知地方の岩見沢市でしょう。理由の一つは、GPS基地局を自治体がきちんと整備していて、自動化できる下地がある。GPSがないと設定した経路を正確に走れないですから。もう一つの理由は、北海道のスケールが他府県と全然違うから、ロボットAIを導入した時の効果が非常に高いこと。
次はどこだろう……。統計的にみると、2020年の担い手農家の面積は中国地方なんかがすごく大きくなると推計されている。単純に人がいなくて、担い手当たりの面積が激増すると。ああいうところで大規模に農地が出てきたら、耕作できる人なんてほとんどいないんだから、特定の担い手に対して政策が集中する可能性はある。そうなると、意外に合理的なアグリテック(農業と先端技術を融合した取り組み)が入りやすい地域になるのかもしれない。今は遅れているようなところだけれど。もちろん中山間地は別ですが。