2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2017年3月29日

 第一の問題は、買い手である小売電気事業者にとって、非化石証書を購入するインセンティブが限られていることである。

 非化石電源の保有する環境価値は、①非化石価値(高度化法上の非化石比率算定時に非化石電源として計上できる価値)、②ゼロエミ価値(地球温暖化対策の推進に関する法律(以下、温対法)における電力量あたりのCO2 排出量を示す排出係数がゼロkg-CO2/kWhであることの価値)、そして③環境表示価値(小売電気事業者が需要家に対しその付加価値を表示・主張する権利)に分類される。非化石価値取引では、同価値を証書化し、実際の電気とは分けて取引される(図)。

写真を拡大 非化石価値が電気と切り離されて取引対象となる
(注)非化石価値取引市場のイメージ図
(出所)資源エネルギー庁資料をもとにウェッジ作成

 非化石証書の初期帰属については、FITの補助を受けた電源は、その費用を負担した全需要家にある。ただし、同証書の取引を全ての需要家が行うことは現実的ではないので、いわば需要家の代行として、FIT賦課金の小売電気事業者間での平準化等を行っている費用負担調整機関が、小売電気事業者に証書を売却し、これを賦課金の低減に用いる。

 小売電気事業者が非化石証書を保有する動機として、先述の「非化石価値」を30年度に44%以上保有することがある。この結果、「ゼロエミ価値」を反映したCO2排出係数は30年に0.37kg-CO2/kWh程度と、主要な小売電気事業者による自主目標が達成される。

 しかし、30年より前に、小売電気事業者が非化石証書を保有するインセンティブが生ずることは考えにくい。そこで、目標年より前に44%とは別に目標を設定することも考えられるが、これを合理的に設定することは難しい。そもそも非化石電源の比率は、販売電力量や原子力の再稼働の状況等、再エネ導入量以外の複合的な要因が絡み合っており、小売電気事業者の自助努力だけでは如何ともしがたいためだ。


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