2022年10月1日(土)

WEDGE REPORT

2017年3月31日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

大統領令の連発

 そこで彼が人気挽回策として就任直後から矢継ぎ早に打ち出してきたのが、オバマ前政権がスタートさせた国民医療保険制度「オバマケア」の撤廃、環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退宣言、イスラム諸国からの移民・旅行者入国禁止、メキシコ国境沿いの不法入国者阻止のための「壁」建設構想など、一連の大胆ともいえる大統領命令だった。   

 ところが、選挙公約の目玉としていたオバマケアの撤廃とそれに代わる共和党代替法案は、下院共和党内の多数の造反と民主党の反対で撤回となったほか、入国禁止令もハワイ、ワシントンなどの連邦地裁で差し止められ、巨額の費用を要する「壁」建設計画も、メキシコ政府の反対にあい具体的な実現のめどが立っていない。

 それでもトランプ氏は少なくとも表面上は、強気の姿勢を崩さず、「オバマケア撤廃は一時棚上げでも、次は大幅減税に着手する」とホワイトハウス執務室で報道陣を前に大見えを切って見せた。しかし、米議会法案審議に詳しい政界筋は「代わる財源確保のめどがたたないまま法人税などを大幅カットすれば財政赤字はふくらむだけであり、共和党内の反発も少なくなく、下院可決はオバマケア代替法案以上に難しい」と指摘する。

 一方、昨年以来マスコミで取りざたされてきたロシア諜報機関の米大統領選介入疑惑をめぐり、連邦捜査局(FBI)、米議会における真相解明の動きも、トランプ政権にとっては気がかりだ。

 すでにコーミーFBI長官が3月中旬、下院情報特別委員会での証言で、ロシア政府が選挙期間を通じ、プーチン大統領に批判的だった民主党のヒラリー・クリントン候補の当選を阻止するため違法性の高い対米諜報工作に乗り出していたことを事実上認めたほか、現在すでに、トランプ陣営がロシア側と共謀した可能性も含めて捜査中であると明言した。

ウォーターゲート事件並みの超党派の議会特別調査委員会設置

 これとは別に、共和党の重鎮ジョン・マケイン上院軍事委員長らを中心に、ロシアとトランプ陣営との共謀疑惑解明のため、ウォーターゲート事件並みの超党派の議会特別調査委員会設置の動きも見逃せない。そしてもし調査の進展具合で、大統領自身もこれに関与していた疑惑が出てきた場合は、最悪の場合、弾劾に追い込まれる可能性も否定できなくなりつつある。

 トランプ大統領は、就任以来、週末はワシントンではなく、南フロリダの自慢の別荘「マー・ア・ラーゴ」でメラニア夫人と過ごすことが多くなった。その回数は3月半ばまでの間にすでに5回にも及んでいる。そしてかたや、自らの出身選挙区かつ“郷里”でもありながら、大統領選ではクリントン候補に大敗したニューヨーク市。今なお断続的にトランプ批判デモが続くその中心部マンハッタンの一等地にある豪華絢爛たる自分のトランプ・タワーでは、夜も落ち着いて眠れないというのだろうか。

  
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