2024年11月22日(金)

韓国の「読み方」

2017年4月4日

次期政権で改憲は実現するか?

 韓国ではいま、強すぎる大統領の権力を制限するための憲法改正が必要だという議論が盛んに行われている。現在はお飾りになっている首相に実質的な権限を持たせるべきだとか、いっそのこと日本のような議院内閣制にしよう、いやフランスのように外交と安保は大統領で、内政は首相というシステムがいいなどと百家争鳴である。5年任期で再任を認めないことに問題があるとして、米国のように任期4年で2回まで大統領を務められるようにすべきだという意見もある。

 しかし実際には、議会の干渉を受けることなく行政府の長が閣僚を任命できる国は少なくない(大統領制ではないが、日本もそうである)。大西裕神戸大教授(行政学)によれば、行政府の長である大統領が予算案や法案の提出権を持つ国は珍しくない。軍の最高司令官を務め、戒厳令を敷く権限を持つのは当然ですらある。韓国では、米国を比較の対象にすることが多いから「韓国の方が帝王的」となりがちだが、それは世界の常識とは言えない。連邦制国家であるうえに、連邦政府においても強大な権力を持つ議会を抑制するために大統領というポストが設けられた米国はむしろ例外的な存在だという。

 韓国で起きる権力型犯罪はむしろ、法律的な権限を持っていない人たちが起こすのである。法律に書いてあるわけではない事柄について、大統領の意向を忖度した結果ということもある。属人的な政治文化が問題の根源にあるのだとしたら制度を変えるだけでは足りないのだが、それでも何もしないよりはいいだろう。87年の民主化から30年を経て選挙による政権交代という考え方が完全に根付いたように、制度の変更が政治文化を変える一歩になることも期待できる。

 ただし、憲法改正は簡単ではない。国会在籍議員の3分の2の賛成を受けて国民投票が実施される。国民投票では投票率が50%を超え、投票者の過半数が賛成しなければならない。大統領弾劾騒動で社会の分断と対立がさらに深刻化しているうえ、次期大統領に不利益をもたらす内容となる可能性もある。だが、何もしなければ次期大統領も政権末期には不幸な姿を見せることになりかねない。改憲に限るわけではないが、なんらかの政治改革が必要であることは明白だろう。

  
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