2024年12月18日(水)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年4月17日

財政金融政策で不況からの回復を目指す

 不況期には、政府が公共投資を増やすことで、失業者が雇われます。雇われた元失業者が受け取った給料でテレビを買うと、テレビメーカーの売上が増えるので、テレビを増産するために別の失業者を雇います。テレビメーカーに雇われた元失業者が……と続くことで、景気が回復していきます。

 減税も、景気対策として採られる事があります。代表的なのは、サラリーマンへの所得税減税です。企業が支払う給料が同じでも、所得税が減税されればサラリーマンの手取りが増えるので、消費が増えて景気が回復するだろう、というわけです。

 これについては、「サラリーマンが減税分を貯金してしまえば、景気対策の効果が薄れる」という問題がありますから、公共投資の方が景気を回復させる効果は大きいのですが、一方で、公共投資は無駄な道路が作られたりしかねないという問題があります。所得税減税であれば、減税されたサラリーマンが無駄な物を買うことは考えにくいので、その点では公共投資より優れているとも言えるでしょう。

 景気対策と言えば、日銀の金融緩和も重要です。ただ、不況期に金融を緩和しても、効果がそれほど期待出来ないのが普通です。不況期には、工場の稼働率が下がっているので、「金利が下がったから、借金をして今ひとつ工場を建てよう」と考える企業は少ないからです。まして、ゼロ金利になってしまってから金融を更に緩和しても、効果はほとんど無いはずです。その意味では、今回の黒田緩和は、実に珍しいことが起きたわけです。筆者は、本来効くはずのない政策に効果があったという意味で、「偽薬効果」と呼んでいますが。

 バブルが崩壊して以降、一度もありませんが、財政金融政策は景気が過熱してインフレが懸念される時に、景気をわざと悪化させる場合にも使います。この時は、金融政策の効果が抜群です。金利を上げれば、借金して工場を建てる企業が減るからです。一方で、財政の方は公共投資を減らすべきなのですが、景気拡大で税収が増えている時に計画済みの公共投資を中止するのは、政治的に難しい場合が多いでしょう。まして「インフレ対策で景気を悪化させるため、増税する」というのは、ほぼ不可能でしょう。

海外の景気変動が国内景気に影響する

 リーマン・ショックで国内景気が深刻な不況に陥った事は、記憶にあたらしいでしょう。反対に、外国の景気が拡大すれば、輸出が増えて日本の景気も回復する、という力も働きます。

 特に重要なのは、米国の景気です。日本から中国等に輸出された部品が組み立てられて中国から米国に輸出されている、といった場合が多い、というのが一つですが、それ以上に重要なのは、米国が好況だとドル高円安になりやすく、日本の世界向け輸出が増えやすいからです。


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