2024年11月21日(木)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2017年4月26日

 10年ほど前にベルギーのブリュッセルで抱きつき詐欺にやられたことがある。この手のスリを「イベント型盗難」と呼んでいるそうだ。得意先とワインを飲みすぎて酔っぱらってホテルに入るところをアラブ系のベルギー人に「柔道、柔道」と組み手を強要してきたので「体落とし」で投げつけたのだが気が付けば財布を抜かれていた。今でこそブリュッセルの治安はかなり悪化してきたが昔はそれほど悪くはなかった。

 かなり酩酊していたから調子に乗って相手にしたのがまずかったのだが、投げ倒した瞬間に上手に内ポケットの財布を掏られたのである。幸いにしてクレジットカードはカバンに入れていたので数百ドルのキャッシュだけが被害だったので笑い話で終わった。パスポートはホテルに置いてきたから何ということはなかったが、今になって思えばパスポートもカードも持ち歩かなかったから良かったが一歩間違えると強盗事件に発展していた可能性だってあったはずである。

12歳くらいのジプシーの妊娠した女の子が抱きついてきた

 柔道型抱きつきスリもイベント型盗難に分類されるがもっと強烈な経験をしたことがある。20年ほど昔のモスクワでの経験である。僕の前職の蝶理の同僚がインツーリストホテルから出てしばらく歩いていると12歳ぐらいのおなかの大きな女の子が近寄ってきて同僚に抱きついたのである。驚いて後ずさりすると後ろから3人の10歳から12歳ぐらいの少年たちが同僚を羽交い絞めにして鞄をひったくるという乱暴な手法である。

 同僚は大きな声で叫び続けたのでちびっこのジプシー軍団は逃げて行ったがナイフを持っていたので同僚はけがをした。イベント型盗難とは直接の犯行の前に被害者が気を取られている隙をついて実行に及ぶという犯行スタイルである。服にケチャップを付けたり、靴磨きのグループが被害者の靴に泥を塗って数人が犯行に及ぶというのも旧ソ連崩壊の時期にはよく聞いたものだ。

バックパッカー時代には生き死にがかかっていた

 今でこそまともな交通手段できちんとしたホテルに宿泊しているが僕の20代の若い頃は無銭旅行だったから、盗難事故は命に係わる事件であった。それでも日本人バックパッカーは数カ月分の命が続くだけの蓄えは持っていた。ドイツ人は1カ月分、英国人は1週間分、フランスのヒッピーは本当に無銭だった。

 バックパッカーも2年目ぐらいになると仕事をしながら旅を続けるから一日の生活費は5ドルぐらいで虎の子の数百ドルをベルトや下着の中に縫い込んで隠してみたり、お金の所持が分からないように知恵を使ったものだ。逆に命の担保に時計やカメラなどの貴重品を泥棒に直ぐに渡せる体制も考えていた。アフガニスタンで野宿していたとあるバックパッカーが手首ごと時計を強奪された話を聞いたこともある。ひったくり、ジプシー窃盗団、などを相手にするときは「首に吊るす財布」は危ないし、「さらしの腹巻き」やリュックサックは所持金の場所を教えているようなものだから初心者である。

では対策はどうすべきか?

 それでも旅はやはり楽しく愉快に過ごせたら最高である。そのためには「備えあれば憂いなし」である。そこで楽しいGWの旅の十条を守ってゆけば安全な旅が楽しめると思う。

  1. スマホカバーにクレジットカードを入れるな!スマホは手放すな!後ろポケットは危険
  2. 窃盗団に狙われない為には旅行中の1人行動は止めよ!人混みに注意せよ!
  3. 出来るだけ荷物は持つな。リュックは前に抱える形にせよ。
  4. 財布とパスポートは内ポケットに収納せよ!ジャケットのポケットもダメ!
  5. 食事の時に鞄を通路に置くな!席を離れる時も持ってゆくこと。テーブルに財布を置くな!貴重品を人目に見せるな!
  6. 事故が起きたらまず先にクレジットカード会社に通報しカードの払出しを即停止せよ!
  7. その次に最寄りの警察署に通報せよ。事故証明を取れ!
  8. お上りさんルックは止めよ!着飾った金持ちに見えても何の得にもならない。
  9. 目立つ行動をするな!日本と海外では治安が格段に違うことを理解せよ!
  10. そして安全な旅は行った国の経験者に聞けばどこに危険が潜んでいるのかがわかるものだ。例えば:ロンドンのジプシーのちびっこギャング! 最近では私服警官を装って検査するふりをして現金を抜き取るスリ。パリの地下鉄は特にスリや置き引きが多い。ギリシャの白タクに注意、イタリアの集団強盗は新聞で視界を遮る強盗、睡眠薬を飲ませる暴力バー、アイスクリームを付けるスリグループも。オランダの列車スリ網棚に注意。警官がグルになって荷物泥棒しているからロシアや中央アジアでは荷物を空港に預けないこと。スペインの首絞め強盗はジプシーが多い。

 一般的には東南アジアやアメリカが危険だと思っている向きが多いようだが実際の盗難件数では格段に欧州が多いのである。

 まあ、考えてみれば「スリや置き引き」はまだ可愛いほうかもしれない。世界中で起こっている悲惨な事件はいくらでもある。シリアへの米空軍によるミサイル発射や北朝鮮のミサイル発射実験に比べるとロシアの窃盗団などは可愛いものだともいえる。

 世界の観光地で盗難事故に遭いやすい国民は日本人観光客が群を抜いて多いとも聞く。日本では仮にカバンを街で置き忘れても財布を紛失しても大抵は発見されて落とし主のもとに戻ってくるお国柄である。世界中でこんな国は見たことがない。日本人が特別にお金持ちでもないし犯罪に対して鷹揚でもない。道徳観や文化レベルは多少ほかの国家より高いのかもしれないが窃盗事件に慣れていない世界で稀にみる「平和ボケ」の国家だとも云える。

 さて最後にせっかくのGWの海外旅行先の窃盗件数のランキングトップ10を報告して筆をおきたい。

第10位 ベトナムのハノイ
第9位 ギリシャのアテネ
第8位 オランダのアムステルダム
第7位 アルゼンチンのブエノスアイレス
第6位 イタリアのフィレンツェ
第5位 フランスのパリ
第4位 スペインのマドリッド
第3位 チェコのプラハ
第2位 イタリアのローマ
第1位 スペインのバルセロナ

以上はTrip Advisorからの情報であるが、World Atlasの治安最悪ランキングによると

第10位 ボスニアヘルツェゴビナのサラエボ 
第9位 スコットランドのグラスゴー 
第8位 オランダのロッテルダム 
第7位 イギリスのコベントリー 
第6位 フランスのリール 
第5位 フランスのマルセイユ 
第4位 イタリアのナポリ 
第3位 イタリアのトリノ 
第2位 イタリアのバーリ 
第1位 ロシアのロストフ・ナ・ドヌである。

 やはり栄えある? 第1位はやはり予想通りロシアであった。ここはロシアとウクライナの国境にあるドンバス地域であるが日本人旅行者はまず行く可能性は少ない地域なので単なる参考として頂きたい。

  
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