2024年4月16日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2017年5月3日

人口と地域を考える

人口オーナス(生産年齢人口の減少)は、潜在成長率を低下させ、賦課方式の社会保障を行き詰まらせ、地域間格差の悪循環を引き起こす。

 理屈はそうですが、高齢者が働けば良いのだと思います。サザエさんの波平氏は54歳ですが、氏より元気な高齢者は大勢いますから(笑)。高度成長期に決められた「65歳以上は高齢者」という定義を変更して、「70歳まで働いて税金等を納め、70歳から年金を受取る」事にすれば、多くの問題は解決するでしょう。もちろん、働けない事情のある人には個別で対応する必要がありますが。

「高齢者向けの社会保障を削減して、子育て支援を増やす」しかない。

 正論ですが、少子化対策は緊急かつ絶対です。国が滅んでしまいますから。従って、「財源を探してから子育て支援を増やす」のではなく、「子育て支援を増やしてから財源を探す」必要があります。「角を矯めて牛を殺す」愚は避けるべきです。

人口が減少しても、国内の経済規模は縮小しない。それでも縮小すると考える人が多い一因は、減る需要は明らかだが増える需要が不確実だからだ。

 これは、眼から鱗です。人口が減れば子供服の需要が減る事は誰でもわかりますが、「それでは何が増えるのか」と聞かれても、答えられません。でも、子供が減るとペットを飼う人が増えるかもしれません。高齢者がクルージングを楽しむようになるかも知れません。「何が増えるかわからないけれど、生産面のGDPが増えるのだから、消費面でも何かは増えるはず」なのですが、想像力が乏しいと、減るような気がしてしまう、というわけですね。なるほど。

「東京の出生率が低いから、東京一極集中を是正すれば出生率が上がる」は誤りだ。東京で結婚相手を見つけて、生活費の安い郊外に新居を構える人が多いのだ。東京一極集中は、独身男女のマッチングに資しているのだ。

 これも、眼から鱗ですね。「統計は嘘をつかないが、統計使いは統計を使って嘘をつく」という言葉を思い出しました。この場合は、統計を使っている人も自分で誤解しているのでしょうが(笑)。

スマート・シュリンク(過疎地から人々を移動させる)が必要。

 100%合意しますが、実際には容易ではないでしょうね。評者は、都会暮らしが長いので、「生まれ育った所で死にたい」と言う願望は強くありません。著者もおそらく同じでしょう。しかし、田舎で暮らしている人々、特に高齢者は、そうした願望が強いようです。これを無理矢理都会に移す事は出来ません。「都会に移ってくれたら年金を3倍払うから」という方が、トータル・コストは大幅に下がるのですが、それで動いてくれるとも思われません。

 国民の総意で「スマート・シュリンク促進法」を作れば良いのでしょうが、「可哀想だ」という意見の方が強そうですね。「過疎地を維持するにはコストがかかるが、それを負担する覚悟が国民にあるのか」という問い方をするべきなのですが・・・。

ちなみに、評者が本書を読んで、最も眼から鱗だったのは、東京一極集中というか大都市への人口の集中が生じる理由の説明です。ネタバレになりますので、記しませんが(笑)。

  
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