2022年11月27日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月30日

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 結論はともあれ、堅固な論評です。問題解決のために必要な視座が示されています。リビアの国家統一の複雑さが良く分かります。さらにイスラエルのリビアへの深い関心が窺われ印象深いです。かつてイスラエルはカダフィとは不思議な実務的関係を持っていたと言われます。石油確保を狙っていたのでしょうか。あるいは異端者の政治力に保険を掛けたのでしょうか。

 筆者は、①リビアには歴史文化的に中央集権への抵抗感があり地域分権の重要性を考慮することが重要であること、②政治正当性を確保するためには1951年憲法の君主制度の再導入も考えるべきであると述べます。選挙を通じて正当性を獲得する西洋流のやり方は未だ適用できず、リビアの状況を踏まえた現実的な政治機構づくりを主張しています。

 最近の複雑化要因は、過激派の侵入とロシア、エジプトの介入の進行です。筆者はそれを阻止するためには米国の関与が必要であるとします。トランプの劇的な外交逆転政策がリビアで効果を持つ可能性があると述べています。目下トランプはそれには反対しています。トランプの反対は理解できます。米国にとりリビアの優先順位は低い筈です。米国の死活的利益が掛かっているところではありません。欧州の要請によって関与を始めればキャメロンとサルコジに求められて渋々関与した2011年のオバマと同じことになります。歴史的な経緯や地理的近接さを考えれば、当面欧州による共同対処に任せておくのが現実的ではないでしょうか。更に政治交渉については国連が主要国の支援を得て主導していくのが適当と考えられます。

 今のリビアの状況を見れば2011年の介入は失敗でした。この論評が言うように、あれから6年経ってもリビア安定化の目途は全く立っていません。部族、軍閥、政治勢力が対立し、中央和解政府が作動するような状況ではありません。2011年の国際社会のリビア介入はカダフィ政権を倒した後のことは深く考慮していなかったということでしょう。レジーム・チェンジは慎重に考えるべきです。新体制の確立が見通せない場合、介入は状況を一層悪化させます。国際社会はリビアの失敗から学ぶことが多くあるように思われます。

 リビアの政治は最終的にはリビア人が解決すべきでしょう。国際社会が今なすべきことは外部勢力が介入しないようにすることではないでしょうか。当面注意深く放置しておく以外に良いオプションはないのではないでしょうか。更に成功の見通しのないことはやるべきではありません。

  
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