細田守監督から学んだこと
――水上さんがきっかけだったんですね。たとえば伊藤監督が一緒に仕事をした監督の中で、打ち合わせの方法などで影響を受けた方はいますか。
伊藤:俺は細田守監督の『時をかける少女』と『サマーウォーズ』に助監督として参加したのですが、細田監督の「作画打ち合わせ術」には影響を受けていると思います。
細田監督は、最初に一言で端的に作品の概要を語るんです。『サマーウォーズ』であれば「これは田舎の親戚が世界を救う話です」といった具合に。それからざっとあらすじを説明したうえで、「ここが担当してもらうカットです」と具体的な説明に入っていくんです。ここまで1分もかからない(笑)。シンプルで素晴らしいですよね。
もちろん最初の説明で食いつきが悪い人であれば、もうちょっと別の説明の仕方をすることもありますが、基本は変わらない。
――そうやっていろいろな方から吸収していくうちに、伊藤監督なりのスタイルが出来上がっていったんですね。
伊藤:宮﨑駿監督みたいに一人のイマジネーションで映画を作り上げていく方もいらっしゃいますが、そうじゃない監督の方法もあると思うんです。それを自分なりに模索した結果、「わかりやすい言葉で伝える」ことを中心にした今のやり方に至った感じですね。
――ありがとうございました。
“幹”と“枝葉”を区別する
マネージャーの立場になっても、プレイヤーとしての仕事を手放せない人はビジネスの現場でもよく見かけます。とくに優秀なプレイヤーだった人ほど陥りやすいと言われます。決して悪いことばかりではないと思いますが、あまりに“枝葉”まで入ってしまうと、マネージャーとしての本来の職務を放棄していることにもなりかねません。そうならないためにも、「これは本当に大事なことなのか」と自問自答していく必要があるのだろうと思います。それでもついつい枝葉に目がいってしまう場合は、「本当に大事なこと(=幹)」だけをできるだけシンプルな言葉で把握するところから始めてみるとよいのかもしれません。(編集部より)
'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。
▼参考情報
「劇場版SAO」メイキング セミナー レポート(※外部リンク)
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