世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月24日

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 キューバ政策について、トランプは、選挙戦中、自分であればもっと良い交渉ができたと言っていたのであり、必ずしもオバマの政策を全否定していたわけではないので、今回の政策変更は、予想された結果といえます。記事の指摘のように、これは確固とした戦略に基づくものではなく、トランプを支持したマイアミのキューバ系米国人への配慮とオバマのレガシーの否定が目的であり、加えてロシア・スキャンダルを審議する上院情報委員会の有力議員であるルビオ等に対する考慮もあるのでしょう。また、中東外交、北朝鮮問題等でさしたる外交的成果も収められていないことからも、このタイミングでの政策発表となったのでしょう。

 キューバ経済の6割は、ラウル・カストロの娘婿がトップを務める軍が支配する国営企業が握っており、米国との関係正常化による経済的利益がカストロ一族や軍の懐に入ることを嫌ったトランプの措置も理解できなくはありません。しかし、これがキューバの現実であり、このような現状が改革されるには相当な時間がかかります。オバマは、むしろ米国企業にとって利益になる点を重視したのでしょう。

 対キューバ政策を後退させれば、キューバ側に対米批判の口実を与え、ロシアやEUとキューバの関係が緊密化し米国がラ米外交で孤立するとの批判もあります。長年の対キューバ制裁が何等の成果もあげなかったのは事実であり、何か新しいことを試みなければ何も変わりません。その面から米国世論や議会では対キューバ関係改善に対する支持が多数を占めています。トランプのいう米国第一主義の「米国」は、ここではキューバ系コミュニティ等の強硬派を意味しており、そのための人権重視とすれば、あまりにもご都合主義ではないでしょうか。キューバが米国との関係改善に利益を見出した段階で、人権尊重、自由化への圧力をかける戦略もあるのではないでしょうか。

  
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