なでしこバックパッカーの武勇伝
男子の武勇伝に負けず劣らず強烈だったのは女子の体験談である。ナツキちゃん27才はオフィス勤めを辞めて350万の軍資金で世界一周の途上。色白の華奢な外見からは想像できない体験を淡々と語る。ヒンズー教徒の聖地バラナシで荼毘に付された遺体、動物の死体、大量の生活ごみが悠々と流れるガンジス河に飛び込んで目が腫れて下痢をして現地の病院に3日入院。
夜行列車と“なでしこ女子”に群がるムカデ痴漢
それからナツキちゃんはインド国鉄の夜行列車のジェネラル(普通席)で長距離移動。普通外国人は事前予約でスリーパーという寝台チケットを購入する。ジェネラルは激安で定員がなく無制限に貧乏人が乗車するため驚愕のすし詰め状態。網棚で寝るのは“ましなほう”。椅子にも網棚にも空間が確保できない人間が床一面に折り重なるように寝ている。トイレのドアの前や洗面台の下も足の踏み場もないほど人間が横になっている。
そんなカオスのなかで色白可愛い系のナツキちゃんは退屈しているインド人たちの格好の好奇心の対象だ。“押しくらまんじゅう”状態の固い木のベンチシートの間に“親切おせっかい”な連中がこじ開けてくれた僅かな隙間にへたり込んでナツキちゃんは一息ついた。そのうち昼間の疲れからうつらうつら。夢うつつの中でなにやら“もぞもぞ”と蠢いているのを感じた。気が付くと何人もの男の手がムカデのように体中を触っている。体の向きを変えたり手で追い払ったりしていたが、入れ代わり立ち代わりムカデは押し寄せて一晩中活動していたという。「まったく懲りないというか最後は根負けしちゃいましたよ」とナツキちゃんの感想。
インドムカデの生態は夜行性ゴキブリか?
ナツキちゃんの体験談をしきりに頷きながら聞いていたハヅキさん29才、ナオミさん30才もムカデ体験を語り始めた。
ハヅキさんは会社を辞めてからニュージーランドで4カ月ワーキングホリデーをしてお金を貯めてインドからヨーロッパへ廻る予定。ナオミさんは契約社員のツアコンをやっており3カ月の予定でアジア周遊中。2人とも仕事・結婚・子育てという枠からはみ出してしまったと笑う。ちなみにお2人とも色白すてき系女子である。
この2人によると夜行列車のみならず長距離バスでもインドムカデに悩まされるという。座席のシートの間から複数の手や指が伸びて何度撃退しても全く懲りずに一晩中手を伸ばしてくるらしい。
それでもインドが好き
インド体験談は強烈であるがそれでも全員が「インドが好きで何度も来たい国」という。ナツキちゃんによると途中で知り合った邦人女子バックパッカーは印度人が大嫌いと繰り返していたが数日前に『印度人の彼氏が出来た』とラブラブの写真を送ってきたという。魔訶不思議な魅力がインドにはあるようだ。
⇒第2回に続く
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。