2024年11月23日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2017年7月16日

(2016.4.6.~5.21 45日間 総費用47万円〈航空券含む〉)

戦後開発された砂漠の中のビーチリゾートはひっそりと

 5月13日(金)。カリフォルニア州南部に広がる砂漠地帯の真ん中に位置する湖、“Solton Sea”を一周した。”Bombay Beach”には湖で獲れた魚を取引する市場が無残な廃屋として残っていた。集落には雑貨屋が一軒あるきりだ。手入れされていない住居が数十軒あるが寂れた様子。さらに浜辺の近くの区画にはトレーラーハウス、キャンピングカーが百台以上並んでいるがゴーストタウンのように人影がない。

アリゾナ州境近くのカリフォルニアの荒れ地に放置された石油掘削リグ。油田が枯渇して石油ブームが去った油田地帯には無数のリグや生産設備が放棄されている

 歩いているとトレーラーハウスを修繕している男性がいたので聞いてみるとBombay Beachには100人近くが居住している。冬は避寒地として人々が戻ってくるので人口が200~300人になると。

 1950年代にSolton Lakeは冬のリゾートとして開発された。その後周囲の農地への灌漑用水として湖水が利用されてから次第に湖水が減少して湖の周辺は干上がっていった。さらに周辺の農地開発が進むと農薬等の汚染が問題になり水泳が禁止された。こうして湖畔の集落は徐々に衰退してきたという。

朝からバーで暇つぶしする中高年はコアなトランプ支持者

 さらに車で15分走ると食堂、雑貨屋の看板があった。“Ski Inn”という食堂を覗くとバーも兼ねており中には8人の白人の中高年の男女がおしゃべりに興じていた。

ボンベイ・ビーチで見かけたSKI INNの看板

 8人は地元出身で全員リタイア組のようだ。食堂のオーナー夫婦によるとこのSki Innは宿屋も兼ねており冬は世界中から客が集まりこのバーも大賑わいという。確かに食堂兼バーの天井、壁、柱には無数のメッセージが書かれた世界中のお札が貼られている。

SKI INNの天井や壁は一ドル紙幣や各国の少額紙幣で覆われている

 5カ月後の大統領選挙について聞くと8人全員がトランプ支持。仕事でポルトガルや香港に滞在した経験を持つ元電気技師はトランプ支持の理由を理路整然と語った。曰く、「メキシカンの不法移民は税金を納めず稼いだ金を本国に送金している。不公平は許せない。中国や日本との貿易不均衡は米国の製造業を破壊した。輸入を制限して貿易赤字を減らしアメリカの製造業を復活し労働者の雇用を拡大することで米国経済は強くなる」。

 元電気技師に「アメリカは既に経済構造が進化してIT産業、金融、航空宇宙産業、エネルギー産業などが経済を牽引している。今さら付加価値の低い製造業を中国から取り戻してもアメリカ経済へのプラスにならない。むしろアメリカ製の割高な工業製品を買うことになり消費者にとり不利益となる」と指摘したが、こうしたマクロ経済学的論点を理解しようとしない。

 元電気技師は「アメリカの労働者はひと昔前には工場で働いて十分な報酬を得て豊かな暮らしをしていた。ところが中国や日本など外国からの不公正な貿易で無数の工場が閉鎖した。失業者は仕方なくスーパーやファーストフードなどの低賃金のサービス業に従事せざるを得なくなった。サービス業では不法移民が低賃金で働くので報酬は低いままだ。それゆえアメリカの労働者は貧しくなった」と白人労働者の没落プロセスを強調。


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