2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月23日

 上記論説は、中国側の見方を割と正確に説明しています。劉暁波という人物は、やはり大したものだと言うべきでしょう。天安門事件以来、非暴力の政治改革を掲げ発信し、最後まで国内に留まり戦い続けました。共産党が最も恐れるタイプの人物なのです。これまで共産党は、経済的に国民を豊かにし、同時に政治的抑圧は緩めないということでやって来ました。これだけでは不十分だということで、平等(格差の是正)、安全(環境保全、食品安全等)、安心(医療改革等)を強調する政策に転換しました。習近平は、これに文化的伝統の復活を図り、中国人としての誇りを取り戻させようとしています。つまり、国民を豊かにするだけでは国内統治は難しくなっているということです。   

 今や、多元化した社会と国民の価値観の多様化を前に、共産党の上意下達の統治システムの有効性が問われています。まず何よりも共産党統治の絶対条件である経済の持続的成長を確保するために、習近平は次の5年で全面的な経済改革をやり遂げる必要があります。すなわち、2013年の「改革の全面的深化に関する決定」の完全実施です。同時に、鄧小平理論の限界を超えて、政治改革に突き進む必要があります。次の5年は、そのための助走期間となるべきであり、そこで一応の政治改革案を準備すべきでしょう。王滬寧(習近平のブレーンの一人、元復旦大学教授)の手になる「政治改革案」なるものを見たという人が出てきているようですが、意味深長なことです。それができて初めて習近平の2022年を超えてのさらなる続投が現実味を帯びて来ます。経済、政治の両面で成果を上げることができなければ、これ以上の権力集中も不可能であり、習近平政権の「終わりの始まり」となるでしょう。
 

  
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