野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2017年8月29日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

――あなたを含め、民主化運動に関わって当選した議員が次々と資格を剥奪されました。

梁:資格が剥奪される以前、私は議員給料の半分を使って数名のスタッフを雇用していました。政治活動の維持には毎月10万香港ドル(およそ140万円)の経費が必要です。司法案件にも費用がかかります。議員資格剥奪を不服としていま民事訴訟を起こしていますが、負ければ裁判費用はこちらの負担になります。また、就任以降の議員報酬を返金せよ、という要求も受けています。それは宣誓に遡って資格を奪われたためです。

 中国政府のもとでは、法によって国を治めるといっても、「rule by law」ではなく、「rule by decree(恣意的な法令による統治)」が実態です。人治であり、法治ではない。本来、太陽は西から昇りませんが、いまの香港では、太陽を西から昇らせてしまうぐらい中国政府にとっては朝飯前でしょう。

なぜ、香港では統一的な抵抗政党が生まれないのか

――香港の民主派や本土派が厳しい攻撃にさらされています。香港にも、台湾の民進党のように統一的な抵抗政党が必要ではないでしょうか。

梁:確かに、現在の香港の状況は、美麗島事件(1979年に台湾で起きた国民党政権による民主化一斉摘発事件)の時の台湾と似ています。しかし、当時の台湾ほどひどくはありません。香港ではまだ戒厳令が敷かれていませんから(笑)。

 いまもっとも大事なのは、刑務所に入った仲間を守ることです。そのために、刑務所の外から声援を送っています。私は経験があるのでわかりますが、中にいても、かすかに外の声援が聞こえてくるのです。我が身を犠牲にして闘った若者を守れなければ、「民主化運動の連中にいったい何ができるのか」と疑われてしまいます。監獄の中の若者たちも手紙を書いて、外の人々に向けて呼びかけてほしい。彼らの言葉はいま、入獄により大きな力を持っています。

 台湾の陳水扁氏(元総統、在任期間:2000年~2008年)も、美麗島事件の前は単なる弁護士でした。美麗島事件で逮捕された施明徳氏(元民進党主席)もその後カリスマとなり、誰もが彼の言葉に耳を傾けるようになりました。美麗島事件の後、反政府の立場をとっていた異なるグループが同意し、民進党結党のための準備委員会を作ったのです。

――香港では雨傘運動以降、小政党が乱立しました。どうすれば政党間の立場の違いや過去のわだかまりを乗り越えられるのでしょうか。

梁:まずは、香港の民主化運動がいま「存亡の危機に瀕している」という共通認識を持つことです。そのうえで、我々には分裂している余裕などないと理解することです。

 香港にも、いずれは統一的な抵抗政党が必要です。しかし、今は党として統一されていなくても、仲間のうちで政治的なアライアンスがあればいい。というのも、香港の選挙制度は奇妙な比例代表制で、少数政党が有利な状況にあります。すぐに統一しようとしても難しいのが現実です。

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